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◇ 「――あれ、生きてる」 「殺してないし」 「えー……。殺してって言ったじゃん」 「やだっつったべや」 起きたら俺は生きていて、目の前に三浦がいた。 膝枕、してくれてたみたい。しゃっしゃっと紙にシャーペンを滑らす音が聞こえる。どうやら一人でプリントを片付けてるようだった。 時間を聞いたらまだ18時だった。ヤッて気絶して一時間も経ってない。 「今日帰るの」って聞いたら三浦は「帰らない」って言った。 膝の上に寝転がったまま三浦の腹に抱きつく。最近筋トレし始めたせいでちょっと腹筋が固い。すーっと息を吸い込んだら三浦の匂いでいっぱいになった。 「なー三浦、俺のこと好き?」 「うん」 「じゃー殺したい?」 「ときどきね」 「へー。じゃあそのまま殺していーのに……」 「長沢って頭良いくせにバカだよな。殺したら死んじゃうんだよ?」 「えー、駄目なの?」 「駄目。んま首絞めてんときの長沢見てんとヨさそうすぎて本気で殺してやりたくもなっけどさ」 じゃあいいじゃんってしつこく食い下がる前に三浦の左手が俺の首に伸びてきた。 三浦はさっきそうしてたみたいに、けれどさっきよりかなり強くきつく俺の頚動脈を押さえつけた。 「ま、だ。駄目」 三浦の声が脳でハウリングする。 俺の視界は一瞬で真っ暗に落ちた。 リモコンでテレビの電源を切ったように、すべてはプツンと遮断されて消えた。

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