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第20話

「でも、今日は最後までしませんよ。知識がないのに友海さんが傷付いたりしたら嫌なんで。ちゃんと勉強しますから」 「真面目だねぇ。勢いで行っちゃう程、理性を吹っ飛ばして燃え上がってないのか…据え膳食わぬはなんとやらだ」 据え膳でもなんでも大事にしたいし、冷めているわけでもない。それでも真田の想いはわかってくれているのだろうとは思っている。 そりゃ抱きたい。溶けて混ざり合って、自分を求める清藤を見てみたい。 だが好奇心では抱けないこと、男同士でどこを使うかもわかっている。清藤に怪我でもさせたならこれから清藤を抱く度にそれを思い出し理性総動員してしまう。そんなセックスはしたくない。お互い気持ちよくなれる繋がりが持ちたい。それだけ、清藤を大切に想っている。 黙りこくった真田の頬を撫でた清藤は優しく微笑んだ。 「わかってる。大事にしてくれてるんだろ。思いのままヤって怪我してもなんだしなぁ。取り敢えず風呂入ってこいよ。待ってるから。事後のピロトークしようぜ」 事後も何も抜き合いをしただけで互いを昂めたことには違いないのだが。そんな時間も大切にしたいと思ってくれていることが嬉しいが、さっきの清藤の言葉に気にかかることもある。 「俺も聞きたいことがありますから」 引き寄せた清藤の唇を奪い一瞬の交わりの後、風呂場に向かった。 さっき清藤の言ったことが気になっている。 『別れる時のお前の冷めた顔』 と言うフレーズが出てきた。 別れる…最近別れたのは同じ会社に勤める女だ。思い起こしてみても何故、清藤が俺が冷めた目で彼女を見ていたことを知っているのか考えていた。 場所は噴水前だった。彼女を引き離す言葉を並べ有無を言わさなかった。弱みに付け込んだそれは酷い言い草だったと今でも思ってはいる。 それを清藤は見ていたのか…? あんな場面を見ていたなら清藤は何を思っただろう。それから日も浅いのに、清藤に告白した自分を軽い人間だと思っただろうか。 見られたくないことは沢山あるが、あんなに場面を見られていたとは… シャワーを頭から被りながらどう説明するべきかと頭を抱えた。取り繕うことはしたくない。なら清藤にありのまま話すことができるだろうか。 彼女に冷めた態度を見せたのはすっぱり切ろうとしたからだと。曖昧な気持ちで付き合っていたこと、どうしてそうなったかを聞かれれば、友人に寝取られた元カノの話をしなければならない。 誰にも、親しい友人にさえ、別れた理由を話したことはない。口が裂けても言いたくなかった。寝取られた惨めな自分を晒したくはなかった。同情されることは何も過失がない自分のプライドが許さなかった。 ありのままを全部。清藤に話した方がいいのか考えはまとまらなかった。 風呂場で考え込むより、一分でも清藤のそばにいたい。こうやって一晩一緒にいられることを優先させたい。 聞かれれば答えよう。嘘だけは言わないと心に決め風呂場を後にした。

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