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第29話

清藤とのキスは気持ちがいい。キスをした人数なんて数える程だが、合わさる唇の感触、シャツの隙間から滑り込ませ触れる肌の感触は滑らかで気持ちがいい。 抱きしめる身体は男のものではあるが、そんなことは気にならないほど清藤に欲情している自分がいる。こんな状況は相手が異性でも同性でも好きであれば求めることは当たり前なんだと、それは清藤も一緒なんだと躊躇うことなくキスを求めてくれている。酒の勢いを借りず正気で求めてくれている。 男とか女とかそんな隔たりは好きになってしまえば関係ないのだとその身体を弄った。清藤と同じく清藤以外の同性をどうこうしようなんてことは考えたことはないが。 糸を引きながら離れる唇、欲情し潤ませた瞳。どれもが扇情的でその先を求めてしまう本能が暴れ始めている。 それは同じ雄として清藤も同じなんだろう。真田の手を取り遮光カーテンの開けていない薄暗い部屋に誘おうとする。 「昨日のあれな、『兜合わせ』って云うんだって。タクシーの中で調べた。その他も色々検索したけど俺は元希を受け入れたいと思ってる。未知の世界だけどさ、お前となら怖くないかなって」 好奇心旺盛なのか、怖いもの知らずなのか。 それでも清藤がそう思ってくれることは嬉しい。正直なところ、好きだと告白し当然のように上手くいくとは思ってなかった真田はそこまで腹を括っていたわけではなく、自らが清藤を受け入れるなんてことは想像もしていなかった浅はかな告白だったのかもしれない。 真田より先にそれを伝えてくれる清藤は男前で、結局は清藤には勝てないのだろうと思った。 でも自分の前に清藤がいるのなら心から安心できる。なら自分も清藤を安心させることができる存在になりたい。 ベッドに腰掛け手を繋いだまま見上げる清藤のそばで、このまま抱きたいと雄の本能が欲情し顔を見せ走り出そうとする。 だが昨日の今日で調べる時間もそれを脳内シュミレーションをする時間がなかった。 大体はわかっている。だが清藤を傷つけるようなことがあれば生きていけない。 「そんな困った顔すんなよ。こんな時はな頭で考えずに勢いでいけばいんだよ。どうにかなる、なんとかなるもんだと俺は思うよ。それに…元希は俺を抱きたくないのかと思っちゃうよ?」 「そんなこと…抱きたいに決まってる。でも知識がないのに友海さんが傷付いたらって思うと…大事にしたいから考えてしまうんです」 「大事にしたけりゃさ、優しく兎に角優しくしてくれたらいい。俺は、俺を求めてくれる元希が見たい。実感させてよ、愛されてるんだって実感したい」 立ち尽くす真田の腰に腕を回し見上げる清藤は妖艶に微笑んだ。 誘い込まれそうな力が働いているのは清藤の魔力なのか。魔法なんて使えるわけないのだか、そう思わせるくらいに取り込まれてしまいそうな瞳から目が離せない。 絡ませたままの視線は自分を求めてくれている清藤で魔力でもなんでもない。ただ自分を欲しがってくれている。自分もそれを欲しがっていたんじゃないかと覚醒するように思い出す。 …まだ追いつかない気持ちが戸惑わせているんだろうか。それでも清藤を抱きたい。 それにしても…この人は順応性の高さは躊躇うってことを知らないのか… 自分が戸惑っている(かたわら)で、反応し始めている股間を柔々と揉み、早くしようとばかりに妖しく誘う清藤をベッドに押し倒した。

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