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第34話

今朝の清藤はいつもと変わりなくキレッキレの指示を出す。 何度も求め続け繋げた身体は辛いと思う。 早朝、清藤は自宅へと帰る姿を見送った時はふらついていた。 重そうに腰を上げ着替えも手伝った。されるがままな清藤は可愛くて構いたくなる気持ちをぐっと堪え、玄関で縋り付く清藤を抱きしめて別れた。ほんの数時間前のことだ。 なのに、清藤はいつもの清藤で、合理的で的確な指示を出す。 「真田、午後から営一で得意先同行な。直帰で」 先日の第一営業部の得意先からのコンタクトに出向くことを言っているんだろう。今週辺りもう一度出向くことは分かっていたが、週明けだとは思わなかった。午後からは清藤と一緒に仕事できないのかと思うと寂しくはある。 視線を向ければそこに清藤がいる環境はこの上なく幸せだと思う。同じ会社の同じ部署。清藤を独り占め出来なくても毎日二人の時間が取れなくても視界の中に清藤がいるだけで充足感を感じる。今日は半日だけだと残念な気持ちは否めない。 「わかりました」 「今送ったメール確認して」 「はい」 清藤から送られたメールを開けば『少し早めに昼飯に出よう』そう書いてある。 ちゃんと二人の時間を作ってくれる。そんな清藤の素っ気ないメールに愛を感じ頬が緩む。 早速、真田は午前中の仕事に取り掛かり清藤とのランチタイムに心躍らせた。 「お前な…そんな憐れむような目で見ないでくれよ。今日の俺は凄く頑張ってると思うぞ」 二度目の天ぷら屋に腰を下ろし、鎧を脱いだ清藤に大丈夫かと声をかけた。 「わかってますよ、辛いのに頑張ってます」 「そうだよ、辛いのに…って、嬉しい怠さなんだけどな。まあ、気遣ってくれるお前が可愛いから許す」 意味のわからないことを言いながら、目の前に置かれた天ぷら定食の蓮根を早速真田の皿に移動させる。 もう、皿に残し端に追いやられることも無く美味しく頂かれる蓮根に良かったなと声をかけたくなる。 「今日は午後から会議でさ、予定通りなら定時に終わる予定なんだけど…お前は何時に終わりそう?」 先程、営業部からの連絡で予定通りに行けば定時には戻れそうだと予定を組んでいた。 「定時くらいには…一旦、社に戻ったほうがいいですか?」 「ん…そうだな、一旦帰ってくる?急ぎの案件は今のところないけど、仕事は山ほどあるし…ちょうどいいしな」 何がちょうどいいのか。今日も一緒にいてくれる予定なんだろうか。 「今日さ…俺んちくる?元希に俺とのこれからのこと…知って欲しいこともあるし…いいか?」

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