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第43話

「尊重しますけど、基本は恋人優先なんで。嫉妬しまくるんでその辺よろしくお願いします」 再びぶぶっと吹き出した清藤に溜息を吐いた。ひーひーと笑いながら隣を歩く清藤を横目にそれでも楽しそうな清藤が可愛くて緩みそうになった頬に奥歯を噛み締める。 「笑いすぎだから。仕方ないじゃん。上司の前に俺ん中では恋人なんだよあんたは。仕事はちゃんとする。するけど……でも恋人だから。割り切れて切り替えられるようになるには時間がかかるんだよ!」 胸を摩りながら清藤は何度か深呼吸を繰り返し呼吸を整え、真田の背中をポンポンと優しく叩く。 「わかってる。元希がちゃんと俺を愛してくれてるってことだよな。切り替えは大事だけど割り切る必要はない。何のために仕事をしてるのかってことだよ」 生活をする為、貯蓄をして豊かに暮らす……そこには愛する人がいて分かち合う幸せがある。 真田にとっての仕事とは生きる糧ではなく、心身共に幸せである為だと思ってた。祖父も父も家族の幸せの為に働き共有する時間を大切にする人だった。それを見て育った真田はそう生きるのもだと信じて生きてきた。 「楽しく生きていきたいから……特にあんたとは」 「そうだな。価値観が合うってことは一緒にいる為の必須条件だからな」 「友海さんがわかってくれてればいいです……俺の中心はあんたなんで」 「……俺もそう思ってるさ」 仕事中には見ることのない柔らかな表情のまま俺たちの前で自動扉が開く。受付の女性が一瞬固まった気がした。ほんの一瞬清藤に見惚れそして視線を逸らさず挨拶を交わした。 「友海さん……その緩んだ顔は俺の前だけにしてください。みんながあんたに惚れると困るんで」 エレベーターの階を知らせる数字を目で追いながら敢えて清藤の顔を見ずに放った。 ただでさえ人気のある人だ。近寄りがたい雰囲気を醸し出してるくらいがちょうど良い。可愛い部分を知っているのは自分だけで良いと真田は伝えたかった。 なのに口元を手で覆い笑いを堪える清藤に溜息を吐く。何がそんなにおかしいのかと、真田には清藤の思惑など知る由もなかった。 清藤自身、こんな風に誰かに愛され嫉妬を露わにされた経験はなかった。恋愛自体あまり良い思い出のない清藤にとって、真田のその想いが嬉しくて顔に出さずにはいられなかったのだ。

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