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第47話

和やかに話し始めたのは二宮と清藤だけで真田はモヤモヤが積もっていく一方だった。 二人が仲がいいのはわかっていた。ただの上司と部下というだけではないことは駅のホームで偶然見たことでもわかってはいたし、二人の雰囲気で察するところはあった。 だがこんなに親しいとは想定外だった。名前で呼び合うだけではない。二宮の清藤の見つめる視線ときたらどう見ても可愛くて仕方がないと言った様子に真田は驚愕し続けていた。 隣の清藤は可愛い顔で二宮に甘える清藤は自分の前で見せる清藤ではなかった。それが恋愛感情かと言えば疑わしいが。 「友海が高校生の頃から知っているんだ」 そう言った二宮と清藤がもう何年も親しいのはわかった。だがそこに良からぬ感情がないとは言い難いと思いたくはないが二人から醸し出される雰囲気に疑っていまう真田はモヤモヤを募らせる。 「そう、誠治さんが結婚するずっと前から仲良くしてもらってる」 二宮はいつ結婚したのか知らないが、清藤の若く初々しい頃からの付き合いってことはわかった。 二人の会話の中から読み取れる過去。それは真田の想像を掻き立てられたくはない。そんな想像はしたくないと真田の脳は拒否している。だが否応なしに二人の会話は、あどけなさが残る清藤の高校生を想像させようとする。 それでも仲睦まじく話す二人の話をじっと聞くしかない真田は運ばれてきた焼き鳥の盛り合わせを忙しなく頬張りビールで流し込んでいた。 「まさか、真田と仲良くなるとは思わなかったなぁ。お前が真田を引っ張ったのはそういうことか」 清藤が俺を引っ張る…二宮の言葉を真田は置き換えて復唱した。手に持ったジョッキをテーブルに戻して清藤を見れば耳まで染めて首を振っていた。 「違うよっ、真田は営業から引っ張った理由は違う」 ちょっと待ってくれ。と初耳だと清藤のスーツの裾を引っ張った。それに気が付いた清藤は真田と瞳を合わせて更に頬を染めた。 「真田を推薦したのは俺だよ。でもそれは押しただけで決定権は俺にはなかったから」 「清藤課長が推すくらいだから企画での必要な人材だと満場一致だったがな」 空かさず返した二宮が笑う。決めたのは幹部だからと清藤は真田の掴んでいた手をそっと触れた。 ということは……接点などなかったはずだと思っていたのは真田だけで清藤はその前から真田の存在を知っていたことになる。 「お前の才能は入社した時から知ってた。営業に配属されたのは意外だったけどチャンスを見て引っ張ろうと企んでたんだよ」 そう言って二宮に向き直る清藤は触れる小指を絡めた。 「真田の才能に惚れ込んでた友は、真田本人にも惚れちゃったか」 はははっと声を上げて笑った二宮の科白に真田の頭はフリーズし、清藤は嬉しそうに真田を見つめていた。

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