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第50話

居酒屋を出て二宮を見送り、酔いの回った清藤を自分のアパートに運びスーツを脱がせベッドに転がした。 纏わりつくように腕を絡ませる清藤をジャケットを脱ぎながらその身体を抱きしめる。 二宮との含みあのる会話でこうやって清藤が男相手にせがんだのは自分しかいないと思いたかった。清藤が過去に男を好きだったとは聞いていないし、男は初めてだと言った。それは過去に男を好きになったことはないということだと思いたい。 心のどこかで焦りが募る。それは二宮の言動で惑わされているのかもしれない。でも清藤は自分の口から話すと言った。ならそれを待つことにする。 焦っても清藤が自分の側から離れるわけではないのだから。清藤が話してくれるのを待とう。 枕元にあったパステルイエローのTシャツを頭からすっぽりと着せた。そして自分の分を用意してくれていたんだろうお揃いのシャツに着替えると清藤の横に転がった。 「元希……似合うね」 酒が潤ませた瞳を覗かせ、酔いの回っている清藤の細い腰に手を回し引き寄せた。 「あんた、誘ってんの?」 酔って誰彼構わずそんな醜態を晒していたと考えたくもない。出会う前の清藤に嫉妬しても仕方がないのだが今日は過去にとらわれ続けている。 「誘っていいのか?ずっと険しい顔で俺を見てたから……機嫌悪いのかと思って……」 らしくない遠慮がちな物言いに瞳を合わせふっと息を吐いた。 険しくもなるだろうことはきっと清藤は気付いている。気遣いながらそう聞いてくる清藤の額に唇を押し当てた。 嫉妬しても仕方がないことはわかっていても感情を隠せなかったのは清藤のことだからだ。 それほど自分は清藤でいっぱいになっている。憧れて惹かれて告白をした。自分と同じだと伝わってくる清藤の想い。全てを自分のものであってほしいと願う気持ちは好きな相手なら当然なのだと清藤の髪を梳きながら笑みを作った。 「今日は嫉妬ばかりしてたんで……険しくなったのかも」 「嫉妬してくれてたのか……なんか嬉しいな、それって」 首元に腕を差し込めば嬉しそうに肩の付け根にすり寄ってくる。嫉妬を喜ぶなんてこっちの身になってみろと悪態を吐きたいが真田の身体を抱きしめる清藤の掌が宥めるように上下に背中を摩る。 それは尖った気持ちを落ち着かせてくれているようで肩の力がすっと抜けていくようだった。

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