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第54話

今週末の予定を何度も確認していた清藤はどこか行きたいところがあるのだとその思惑は分からないまま、最優先は清藤なのだからと言って見せれば嬉しそうに頬を染めた。 そして週末の金曜日迷うことなく真田のマンションで過ごした清藤は一旦自宅に戻り着替えを持って真田のマンションへとやってきた。 その姿は大きなリュックを背負い、両手には2、3着は入ってそうなスーツの入ったバックと大きめのトートバック。まるでどこか遠出でもするような……いや家出に近いような佇まいにソファで寛いでいた真田は慌てて清藤の元に駆け寄った。 「どうしたの?こんな大荷物で……どこか出かける予定?」 清藤の荷物を受け取ると、満面の笑顔で彼は答えた。 「スーツは爺さんが気にしてて元希が着てる姿見たいんだって。細かい所が気になるみたいでさ。それと俺の必需品を持ってきた。これからここで生活しようと思って」 突然の爆弾発言に呆気に取られ立ち尽くす真田を横目に、リュックの中身を床に広げていく清藤。あのものの少ない部屋のどこからこんなにもの物が出てきたのかも驚きだが。 「ここで暮らすって狭くないですか?」 思わず敬語になるくらいには動揺している真田は渡される小物を受け取りつつも清藤のそばに座り込んだ。 「いや、充分だろ。ベッドだってダブルだし、ベランダも広い。何もないうちに比べれば断然住みやすいよね。今更、駄目だなんて言わないよね?俺が最優先だもんな?」 そんな物言いで真田の言質を取ろうとすることは理解している真田は、清藤が最優先なのだから問題はないのだが、清藤の行動は突発過ぎるところがあり驚かされる。清藤のことだから思惑があるのだろうけど。 「駄目だなんて言いませんよ。もうほとんどどっちかのマンションにいるわけだし。最優先にしたいからこそこうやって休日も一緒にすごしてるんで」 ふふっと笑った清藤がソファを背もたれにして身体の力を抜いた。 「先に一緒に住もうって言おうとしたんだけど……お前また要らん心配しそうだったから押し切った形になってごめんな。俺はお前と一緒にいたいから……」 「わかってますよ。俺だって同じですから。それよりお気に入りは持ってきたんですか?」 あの清藤のベッドに並ぶ可愛い小物達を思い出し、癒されグッズは多少なりといるのではないかと思った。言ったそばから自分は癒しにはなれないのかと落胆する気持ちもあるのだが。 「ああ……それな……持ってこなかった。元希がいるから必要ないしな」 頬を染める清藤に、やっぱり自分が癒しなんだと言われ嬉しさがこみ上げる反面、手のひらで転がされている気もしないでもないと過ぎった。 清藤の屈託のない表情に癒されているのだからお互い様だと、大いに転がされてやろうと腹を括り広げた荷物を片付けていった。 とりあえず休日の予定はテーラー清藤の店主に会いに行き、買い揃えるものを見に行く感じなのだと、それはそれで楽しい週末になりそうだと真田は浮かれていた。

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