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第61話

性を間違えて生まれてきた彼女が選ぶなら女性ではないのかと率直に真田は思った。 頭の中で整理しようしているのだが目の前の彼が今にも泣き出しそうな表情を浮かべていることに、咄嗟に立ち上がり清藤のそばに駆け寄り抱きしめた。 「言いにくいことを話してくれてありがとう。あんたが傷付いてずっとそれを心に持ち続けていたんだと思うと堪らないよ。いくらでも吐き出したらいい。胸ん中にあるもの全部。聞くことしかできないけど……」 腕の中の清藤が鼻を啜り深呼吸を何度か繰り返した。 「言葉にするのって怖いな……誰にも気持ちなんて言ったことはないけど……元希には聞いて欲しくて……」 「いくらでも聞くよ。恋人が苦しんでるなら助けてあげたいって思う」 真田の腰に腕を絡ませ腹に顔を埋めた清藤の髪を優しく撫でた。 「ありがとう……彼女が、亡くなったのは帰国予定の一週間前でさ、大事な話があるって……俺に言ったんだ。でも彼女は……お揃いの指輪をした女性と逝ってしまった。つまり俺は振られるんだったんだなって……彼女が選んだのは……彼女が本当に求めていた女性だったんだ。強く手を繋いだまま亡くなって……二人はフロリダで一緒に眠っている」 「そう……」 「何度も彼女が自分の事を話してくれたのに……俺は彼女のパートナーにはなれなかった。いつか離れていきそうな不安から俺を好きでいてほしいとそればかり求めてたんだ。もっと大きな心で彼女を包んでやればよかった。未熟すぎて馬鹿ずぎる自分が情けなかった……きっと彼女も……」 その先は清藤の口から聞くことはできなかった。 愛されたいと、彼女に愛されたいと願った先の恋人は唯一無二の存在と歩み始めていたんだろうか。 その彼女が性に悩み、本能のまま生きていくその姿を思い浮かべても清藤との恋愛を遊びだったとは思えない真田は声を殺して泣く清藤のそばに跪いた。

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