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第71話

その先は聞かなくても分かっている。自分のしたことは真田を遠ざけ裏切るだけの行為であってもう二度と友人という立場に戻ることはない。 真田は河野に対し、なんとも言えない感情を抱いていた。自分が男を選ぶなんてことは思いもしなかっただろう。ただひたすら思い焦がれて嫉妬は元カノに向いてしまった。 ただ、真田を好きでいれば友人という立ち位置は終わらなかったはずだと。 「見たなら隠さないけど……男とか女とかじゃないんだ。あの人が好きなんだ。もう昔の話はここで終わりにしよう。河野も俺もここで昔のことは忘れないか? ここでその気持ち踏ん切りをつけてくれ。俺も彼女とお前に対する苛立つこの気持ちはここで終わりにしたい」 ここで終わりとは河野にとっては辛いものなのは分かっている。その後ろに座る清藤の為にもここで決別したい。真田はただそれだけを思い、 清藤の気持ちを揺さぶりたくない一心で河野に頭を下げた。 「気持ち伝えられただけで……いい。俺だって終わりにしなきゃって思って真田に会いに来たんだ……それにどういう経緯でそうなったのか話したかった。真田、苦しめて悲しませてごめん。ずっと謝りたかった……」 口に運んだコーヒーを一口口に含んだ河野はそっと立ち上がった。 「時間作ってくれてありがとう。もう……会うことはないと思うけど……元気で」 困憊した表情を見せ、そう言い残し席を離れた。その後ろ姿を見送って真田は心の中で最後の挨拶をした。 河野の姿が見えなくなった後、清藤が真田の前にカップごと移動し腰を下ろした。 「凄い展開で言葉にならないけど…」 そう思っているのは真田も同じだ。友達だと思っていた友達がまさか自分を好きだとは誰も思うまい。だが、その気持ちに違和感は持てないでいた。河野は大学時代から男にもモテていた。それはただ親しみやすい人柄に親しい友達が多いのだと思っていた。それでも今思えば付き合っている奴がいるとは聞いたことがないことを思い出す。 今更過去を振り返っても、何も変わらない事実だけが存在しているのだが。 「でも、会って良かったよ。あいつの気持ちは置いといて、俺も踏ん切りがついた。友海さんがいてくれただけでこんなにちゃんと向き合えるなんてって感動してる」 カップに移した視線を持ち上げた清藤と目が合い、その深い瞳の色をジッと見つめた真田に清藤は目を見開いた。 「お前っ、なんて顔してんだよ。とりあえず早く帰ろ。なんか買って急いて帰るぞ」 素早く立ち上がった清藤は振り向きもせず会計を済ませ店を出た。 「お前のその真っ直ぐさは罪作りだよ。あいつもそれに絆されちゃったんだろうな……」 その独り言は真田の耳には届いてはいない。振り返ったその先には清藤に甘く微笑む真田の姿があった。

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