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第75話

飯を食い終えた清藤は早速と言わんばかりに風呂場へと消えて行った。 「一緒に入る?」 などとは言うことももなく真田も聞かない。物理的にも無理なのだが少し寂しいと真田は苦笑を浮かべた。 玄関先で事に及びそうになったのは蓮根サラダを食べたくなかったからなのだろうが身体に灯った熱は吐き出したいに違いない。食事の最中に何度も向けられた視線から充分解っている。  男同士で快楽しかない生産性のない行為でも真田は清藤と愛し合いたい。そして清藤もそうだと思っている。  お互い同性愛者ではない。それでも惹き寄せられるように清藤を好きになり、清藤は応えてくれている。  本能では男は抱くもので抱かれたいとは思わない。なのに真田に身体を任せる清藤はどうなんだろうかと不安はいつも付き纏う。  もし清藤が抱きたいと思うのなら……その覚悟は清藤と付き合うことになった時からできていた。  部屋着のパーカーから淡い桃色のパジャマ姿で現れた清藤は真田を風呂へと急かした。嬉しそうに早く早くと背中を押す。楽しみを待ちわびる子供のように戯れてくる清藤が何だか可愛くて、不安を口にするタイミングは掴めず大人しく風呂へと向かう。 『今日は俺に入れてみますか』なんて直球で聞けるわけがない。 先程の様子では抱かれる側を清藤は無意識に選んでいる。 それは最初がそうだったからであってお互いに決めたわけじゃない。  一度顔を覗かせた不安は後から後から押し寄せて真田を覆い尽くす。デリケートな問題だからこそだが早いうちに話し合わないといつか食い違いそうで怖い。それが不安の根元にある。    もし挿れたいのならとシャワーを勢いよく出し、意を決して双丘を伝い孔に手を伸ばした。硬く鎖している孔は触れるだけでビクッと震え更に硬く鎖してしまう。 ……ここに挿れる……?  ゾワゾワと肌が泡立ち恐怖に似た感情が襲い掛かる。どう考えたって解さないと入らない恥部は真田の指を拒んでいる。とりあえず解すことは無理でも中を綺麗にしたい。清藤が挿れたいと言うなら受け入れられる体制を取りたい。受け入れることに必死になっていく真田はボディソープを数回押し、掌に乗せると勢いををつけ中指を差し込んだ。  ボディソープの力を借りてグルグルと中を掻き回す。違和感しかないその場所を綺麗にすることに懸命になっている。  男の本能だろうか。恥部を触れば頭の中に自分に覆いかぶさる清藤のエロい顔が浮かんでくる。  巧みに腰を使い自分の中で気持ち良くなっている清藤の顔を想像するだけで狭く締め付ける内壁が緩んだ気がした。  気持ち良さはない。ただ異物の違和感だけなのだが清藤の痴態を思い浮かべれば中芯は熱を持ち緩く勃ち上がってくる。  どんな行為でも清藤が相手なら気持ち良くなれるのだと、必死な自分の額に汗が滲むのを感じ空笑いが溢れた。    

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