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第79話

 抗う想いをぶつけるようないつもとは違う激しい行為に、清藤はゾクゾクと抉られるような快感を巻き散らそうともがいていた。  荒々しい雄が自分の中に出入りし、それは最高の気持ち良さだといえばどこかおかしいのかもしれない。  だが愛する人と愛し合う行為におかしいなんてことはないと思っている。受け入れ与えられるのであれば男同士でもなにも問題はない。  誰かに愛されそれを受け入れた時点で成立するもの。その先のことは考えない。わからない未来に悲観してもなにも生まれないからだ。  ただ過去のことに関しては消せない現実であって形を変えることはできない。月日が経てば色を変え美化していくものなのかもしれないが、清藤には元カノの存在は辛く重い過去のままだった。  祖父の店に行けばあの頃を思い出す。それをわかっていて真田を連れて行った。一人で行けば重くのしかかる過去は否応なしに襲ってくる。彼女の残像を怖いとさえ思っていた。真田がいれば大丈夫だと何度も言い聞かしその扉を開けた。  薔薇の花束は予想外だった。大きな花束を抱えた真田はいつもと違って見えた。凛々しく真っ直ぐに見つめる瞳。そしてそこには自分だけに向く愛が詰まっていた。  堪らなかった。こんなにも自分を慕い愛してくれる相手が目の前にいることが。もう一人で抱え込まなくてもいいんだと心の底に穴が開き重く沈んでいたものがズルズルと抜け落ちていった。  この人しかいない。心が叫び歓喜を覚えた。興味本位で真田と付き合ったのは重くのしかかって離れなかった彼女の心中がわかるのではないかと思ったからだった。  そう長くは続かないだろうと。そう思っていたはずなのに先に落ちたのは自分だった。  真っ直ぐ向かってくる真田の思いは嘘偽りなど見えはしなかった。なにを見ても動じず受け入れてくれる。寂しさから愛くるしいものを身の回りに置くようになり、この部屋に誰かを呼ぶことはなかった。多忙な毎日に流されあの頃から抜け出せない想いを抱えたまま恋愛と程遠い生活の癒しだった。    もうこれも要らなくなるのかな……  荒々しく揺さぶられる視線の先の愛くるしいぬいぐるみと目が合う。そして覆いかぶさる真田に視線を向ければ少し湿った掌が頬に触れた。 「加減できなくて……ごめん」  手加減なんてする必要はない。加減される愛情はいらない。真正面からぶつかってくれるぐらいが自分には丁度いい。 「手加減する必要なんてない……俺は全部欲しいからな……」  ぶつかる様に落ちてきたキスを受け入れもう絶対に離さないと汗が滲んだ背中を思いっきり抱きしめた。

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