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第85話

 隣に横たわり確かめるように肌に指を這わす真田の好きにさせ、清藤は不安を吸い取れればと何度も唇を合わせた。  薄暗い寝室でお気に入りのぬいぐるみ達に囲まれて愛しい人と抱き合えることに清藤は何度も幸せを感じている。 少しでも真田の不安を拭ってやりたい。そして自分が沢山の幸せを貰っていることを伝えたい。それは言葉にしないといけない事だとわかっている。 「元希、お前が不安になることなんてないんだよ。お前と知り合って惹かれあってこうやって男同士でも愛し合ってる。不安になったら何度でも言ってやる。俺はお前を愛してる。失いたくない不安と戦ってそばにいたいと願ってる」 「……俺も失くしたくない。離れたくないんです。どうしたんだろって思うくらいこんな感覚は初めてで戸惑ってばっかです……」 「そっか。そうだよな。人を好きになって気持ちが通じ合えば不安も同じように付いてくる。付属品みたいなもんだからな。もっくんはピュアだからダイレクトに不安がのしかかるのかもな」 「もっくんって……」 「可愛いじゃん。これからもっくんって呼ぼう」 「……じゃ俺は……ともさんで……」 「ははっ、まんまじゃん。呼び捨てでもいいのに。まあ、より近くなったみたいでいい感じだな」 「呼び捨てって……まあおいおいって事で……」 「なあ、もっくん。そろそろしねーの?このまんまでもいいけど、俺的にはもっくんのを嵌めたい気分なんだけど」 「嵌めるって……台無し……」 「はははっ、もっくんと嵌めるってなんかいけない感じがする。中学生にでもなった気分だ」 「じゃあ、学生気分で初々しくしますか?」 「辿々しいお前もいいかもな」  切れ長の瞳が優しく甘く真田を見つめる。さっきまでの不安は清藤の戯言で消え去っていた。それは清藤の優しさで自分への想いが詰まっている事を真田は充分過ぎるくらい感じていた。    きっとこうやって何度でも確認しなければまた不安になることはわかっている。重い気持ちに蓋をせず、清藤にぶつけていけばいいの辿々しく伸ばされた腕が背中に回り、スイッチの入った清藤を見つめ、その体温に誘われるように初々しさを思い出し、その細い身体を抱きしめた。

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