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第94話

思った通りの事が起こると、心の中を読まれているのではないかと戸惑ってしまう。 午前中の会議が終わり、仕事モードの清藤はそそくさと座席に戻りパソコンに向かっている。 何か話したそうなそんな清藤を見つめる二宮と目が合い、含みのある笑みを浮かべながら指先が真田を呼んだ。 二宮と話したいと思ったのは事実だが仕事中ではない。仕方なく席を立ち、清藤の視線を感じながら二宮に誘われるままミーティングルームへと吸い込まれた。 「清藤が俺を避けるんだよ。なんか言ってた?」 まあ、真田の思惑とは違う形ではあるが、自業自得では無いかと思った。思ったままを言える相手ではないことは承知の上だ。 清藤な二宮より自分との付き合いを優先してくれるその想いに真田は優越感を覚えている。 二宮と清藤との信頼関係は強い。だからこそ、二宮の否定的な言葉に少しの悲しみと怒りで心が蠢いている。 そんな昨夜は隙間なく身体を触れさせ潤んだ瞳で誘う清藤を抱きしめなだめ、抱きたい気持ちを抑え込み眠った。 髪を梳かし、キスを落とす。快感を呼び起こすには物足りないものでも何も言わず清藤はされるがままだった。 抱けばやり切れない思いのはけ口になる。そんな行為をしたい訳ではない。原因が二宮だと思えばなおさら自分が清藤を愛する行為を吐け口にして欲しくない、ただの嫉妬だ。 尊敬する上司だ。だが、それが原因というのは面白くなかった。 ……子供みたいな妬きもちだけど…… 分かってはいても清藤の中を占める二宮の存在の大きさは叶わないものがある。そこまで築き上げていない真田と清藤との付き合いは浅い。 幼稚な感情に振り回される自分自身が言い訳のように抱かなかった。  そんな翌日、出勤前の玄関先でドアに向かった清藤は急に振り返り、真田の首元に腕を回した。振り向くとは想定していなかった驚く真田に濃厚なキスを贈り、    「今日はヤるからな」 と、端正な面持ちとは程遠い下品な言葉を吐き、広角を上げ不敵な笑みを浮かべた。アンバランスなその態度にヤられたと真田は額に手を当てた。    いつも通りの可愛い笑顔で声を上げて笑う清藤にしてやられ、今日は励まないと!と思った矢先の二宮からの呼び出し。それも幼稚な問いかけに馬鹿にしても優位に立った気がしている自分も大概だと心中で溜息をつくしかなかった。  「俺との付合いを信頼している部長に否定されて悲しんで怒ってるんですよ。って部長はわかってらっしゃるでしょう?」  そう答えれば悩んでるフリをしていた二宮は腕を組んで背もたれに身体を預けふんぞり返り、訝しげに真田を睨んだ。

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