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第98話
二宮から伝えられた内容を包み隠さず真田が話始める。
繋いだ手を何度も握り直し、清藤の顔色をうかがう様子を見せている姿は可愛い。
自分を気遣っているのは自分と二宮の関係を壊すのではないかと思っているからだろうか。
もし二宮と真田を選ばないといけないとしたら当然真田を選ぶ。二宮は世話になり辛いときを支えてもらった恩人でもある。だが自分のこれから必要なのは真田であって二宮ではない。
それは清藤が真田を好きになり選んだということが全ての結果なのだから。
なのにこの可愛い恋人は自分を気遣いながらそれでも視線を外すことなく話してくれている。
嬉しくもあり、嫉妬に似た感情も湧いてくる。
二宮は上司であって仲人ではない。まして見合い相手は元上司の娘だ。出世の為に結婚するなんて時代錯誤もいいところだ。自由に恋愛し心から愛する人ととも共に生きていい時代に私的なことで上司に気など使わなくてもいい。
話し終えた真田は瞳をそらさず、じっと清藤の言葉を待っていた。さながら尻尾を下げ待てをする大型犬だ。
「それで、お前はどうしたい?」
「会いたくないし……恋人がいるって言いたい」
「言えばいいさ。付き合ってる人がいるのであえませんって言えばいい」
「でも……二宮部長は知っててこの話をもってきたんですし……」
「それは建前だろ。真田の恋人を知ってるからってプライべートなことを言ったりしないだろうし。とりあえず高居部長の話を伝えただけだと思う」
「友さんは……言ってもいいの?」
「かまわないさ。そりゃおおっぴろげに言いまわるのはどうかと思うけど、恋人がいるってことくらい言えばいい。むしろ言ってもらわないと困る」
浅く息を吐いた真田に手を伸ばし抱きしめてやると次第にが抜けこもっっていた力が抜け身体を預けてくる。それがたまらなく嬉しく愛おしい。
「男同士でも俺達は恋人で愛し合ってる。何も恥ずかしいことじゃない。俺はお前の恋人であることが幸せだよ」
「……毎日幸せで……こんなことで悩みたくない」
「悩まなくてもいいし、気を使わなくてもいい。俺と二宮部長の関係が悪くなることもない」
「ほんとに……ですか?」
「なんで敬語になるんだ?」
「いや……なんとなく」
見つめ合い絡み合う愛の溢れる戯れは、紛れもなく清藤が欲しくてたまらなかったものだった。愛し合い共に生きることができなかった以前の彼女に求めていたもの。
いや、自分を欲しがり離したくないと痛いくらいの束縛があってもいい。それくらい清藤は愛されるということに飢えていた。
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