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第107話
今まで何度も肌を合わせてきたはずなのに、真田の触れる全てを甘酸っぱいような切なさを敏感に感じ取る。
女を抱く行為が本当ならば、男として生まれた自分はされる側なのはおかしい事かもしれない。 だが真田が相手であればなんだっていい。真田を抱くというのは多少ハードルが高いと思う辺り、自分はされる側のタイプなのかも知れないと、覆い被さり愛しむように触れる真田を感じていた。
同じ男でありながら求め合うことはおかしいのかもしれない。しかし出会ってしまった。運命と思える人に。それが男であり部下である真田元希という男だっただけだ。
こんなに胸が締め付けられる感情に振り回されていても真田を追い求める。その視線、この体温、すべてを自分だけのものにしたいと独占欲を剥き出しに求めてしまう。
そしてそれは真田も同じだという。それが堪らなく嬉しく幸せだった。
もう思い残すことはないと思えるほど充足感に満たされている。もちろんこの先も真田と生きていくのだから思う残す事は多大にあるので未来を望んでいるのだが。
頬を滑り喉元に降りていく真田の体温に期待で体が跳ねる。それをあやすように触れる真田の掌は極上のシルクのように気持ち良かった。
不安を全て拭い去り、真田で満たされていく。まるでこの世に二人だけのような感覚に泥のように溶け合いたいと切望してしまう。
真田が欲しい。
頭の先からつま先まで全部。
そう全部俺のものだから。
「元希……元希……」
聞いたことのない切なく甘い懇願するような清藤の声に、真田はその頬に触れる。
逃がさないとばかりシーツに縫い付けた清藤の手はひんやりと冷たかった。
「友さん?大丈夫?」
大丈夫なんかじゃない。早く早くと求めて止まないのに真田は心配そうに尋ねる。
「大丈夫じゃない。早く早く!」
何に慌て、何を急ぐのか。眞田がどこかに行ってしまう訳でもないのに、清藤は真田を求めた。
「友さん?俺はどこにも行かないよ」
わかっている。それでも早く真田が欲しくて堪らない。
「ここには友さんと俺しかいない。誰かがいたら困るけど、俺はどこへも行かないし友さんと離れたりしないよ」
「なんだろ。お前と早く繋がりたくて……堪んないんだ」
そう囁いた清藤の瞳からこめかみへと辿る涙が零れ落ちた。
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