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第125話

「指示……そうでした。新しいハブを見つけて……現地の労働者の求人も出さないといけません。まずは新しいハブの契約です」 歯切れの悪い指示に処理班は肩を落とした。 火災があってから四日経っている。ずっと火災を嘆いていた訳ではないだろう。 目ぼしい工場のリストはあるのかと不安になる。 そう言えば今朝、清藤から持たされた資料を思い出した。 「必要になるかどうか分からないけど、工場リスト作っておいた。溝下部長の指示と掛け合わせて使って」 火災の起きたものと同じ敷地面積の工場リストと賃貸状況、管理会社が書かれてあった。 ほぼ同じものを約六十もある工業地帯から調べた資料だ。清藤はいつもながら多忙を極めているというのに、その合間に探してくれたのかと思うと胸が苦しくなる。 「俺も視察には行ったことがあるんだけど、利便性を考えて出してみたんだ。必要ないかもしれないけど、参考にはなると思う。これも元希が早く帰って来れるためだからさ」 想いの詰まったリストを鞄から取り出してテーブルに置く。 (必要大ありだよ、友さん……) 日本の清藤に手を合わしたくなった。この状況からしてリスト作成はできていないだろう。今からリストを作るとなれば迅速などとは言っていられない。 「営業企画部の真田です。清藤課長から同じくらいのハブリストを預かって来ました。こちらで出しているリストと掛け合わせて使ってほしいとのことです。こちらのリストはどのような感じですか?出来れば明日から営業かけていきたいのですが……」 四人の社員は顔を見合わせている。立ち上がった部長にファイルを渡すと真剣に目を通すと、一息溜息のようなものを吐き、真田に戻した。 「折角清藤君が作成してくれたんだ。このリストで営業かけてください」 やっぱり。真田は大きく吐いた溜息を咳払いで誤魔化した。 四人いれば二名が火災処理、後の二名がリストの作成が出来たはずだ。 これも溝下の度量と判断力の結果だと不甲斐なく再び肩を落とした。 土地勘のない真田達を送ってくれた現地社員の常磐の勧めで屋台で夕飯を買うことになった。 「真田さん、すみません。至らなくて……」 「いえ……大変でしたもんね」 「分担したらどうですかって提案したんですけど……本社から応援がくるからって……本当にすみません」 四人しかいない社員、部長だからといって本社からの指示を待つこともあるだろう。だが、これでは給料泥棒だと言われても仕方がない仕事内容だ。 提案した常磐自身も部長に対して不信感を持っているのかもしれない。 年の頃は真田とそう変わらないと見える常磐には強く意見を突き通すのは環境的にも難しいのかもしれない。

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