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第151話
夕方、清藤は二宮に呼ばれミーティングルームへと入っていった。
定時を二時間ほど過ぎた頃、清藤からメールが届いた。
ミーティングルームからは清藤はまだ出てきてはいない。
メールを開けば、少し遅くなるが待っていてほしいとのことだった。
炊飯器のタイマーは仕掛けてきた。帰る頃には炊けている。作り置きしたものがあるから少しぐらい遅くなっても清藤にちゃんと食事は取らせられると、主婦のような夕飯の確認をしていることに真田はふっと笑みをこぼしてしまう。
清藤にちゃんと作ったものを食べさせたいと思っているのもあるが、テーブルを囲んでその日あったことや色んな話をしながら食事がしたい。
毎日同じ職場にいて、寝食を共にしていても言葉で伝えなければ分からないことはある。
これからはまたタイに行くことも増えてくるだろう。そう思えば尚更食事の時間は大切だと思っていた。
治療中の間に弁当を持参するようになった。最初は渋々持って行っていた清藤だが、食事の時間もバラバラな職場で、人の目を気にすることがないとわかった彼は喜んで持って行ってくれるようになった。
節約のためでもあるが、清藤に手料理を食べさせい。たまには外食もいいが手料理は格段違うと思っている。
終業間際は社員もまばらになり、真田は肩の力を抜き、そんなことを思っていた。
メールの返事をし終え、身の回りを片付けていると、ミーティングルームから二人が出てきた。
いつもながらの早足で近付いてきた清藤は課長の鎧を脱ぎ、柔らかい笑みを向けてくれる。
「待たせてごめん。帰ろうか」
返事をすればまた可愛い笑顔を向けてくれる。
並んで歩く横には清藤がいる。他愛もない話をしながら笑みを浮かべ見つめてくれる平和な日常に真田は堪らなく幸せを感じていた。
家に帰りドアを閉めた途端、清藤の手が首元に回り、熱い抱擁と柔らかい唇を堪能し一日の疲れを癒す。
手を繋ぎ部屋に入ると二人の時間を作る為、篭った空気を外へ逃がし、食事の準備をする傍ら、清藤は洗濯物を取り入れたりと家事を分担し、帰宅してからやっと腰を下ろし、食卓を囲んだ。
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