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第153話

「元希、そんな目で見つめるなよ」 清藤を見つめるの目は血走ってでもいるのだろうかと慌てて瞬きをしてみるが、そんなものでは欲にまみれた雄の炎は消えるわけではない。 清藤はふっと溜息を零したが真田の目論みには充分に分かっている。 自分だってそうだ。この日を待ちわびて指折り数え……ってことはないが、遠足を待ちわびる子供のように心は弾んでいた。 遅くなった打ち合わせ。それでも真田と一緒に帰りたいと思ったのは、自分達の甘い夜は一歩社を出たところから始まると思っていたからだ。 足を真っ直ぐに伸ばした清藤は、『俺もだから……』と、無言で囁くように、つま先を真田の足の付け根にそっと伸ばした。 ビックっと体を揺らし、真田は自分の股間と清藤を交互に見る。 表情の下の胸の高鳴り隠し、平然と食事をしながら足先は器用に中芯を摩り刺激した。 箸を置いた清藤は少し首を傾けゆらゆらと妖しく光を灯した瞳を見せ、真田の身体はゾクゾクと這い上がる快感が身体の熱を上げていく。 「俺だって……」 そう呟き、頬をうっすら朱に染め視線を絡ませた。 食器をシンクに置き、無言のまま真田に近づき頬に触れるだけのキスをした。すぐに離れた清藤のその足は洗面所に向かっていく。 一連の清藤の動きをポカンと見ていた。ハッと覚醒した真田は、その後味わうこともなく全速力で飯を詰め込んだのは言うまでもない。 全速力でテーブルの上の物を全て片付け洗い物を済ませ、洗濯機の中の物を素早く畳んでいく。 寝室に飛んでいき、早まる動悸に足踏みをしながら、必要なアイテムを確認し、クローゼットの中から新しい濃度のある液体と小さな四角い物を三枚手に取り、枕の下に置いた。 シーツの上に大判のタオルを二枚広げた真田は指さし確認をし、寝室を後にした。 何もなかったようにソファに腰かけ、スマホを手に取り見たくもない画面を忙しくスクロールしていく。 浴室のドアが開いた音にビクンと身体を揺らし、更に指は速度を上げ鼓動とリンクさせていた。 下着一枚で現れた清藤はタオルで髪を拭きながらソファに持たれていた真田の背後に回り、長い指が真田の顎を持ち上げ柔らかな場所に唇を落とした。 「入ってきたら?」 見上げる至近距離の清藤の髪から雫が胸元に落ち、それは秘薬のように真田の胸元から腹部へと零れて染み込んでいくようだった。

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