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第4話
百八十をゆうに越える身長は、百六十八しかない結太よりもずっと高く、スタイルも抜群にいい。そして顔は眉目秀麗という言葉を体現しているかのように整っている。女性なら誰でも、目があえば無条件に頬を染めてしまうタイプの正統派イケメンだ。
今日の彼の恰好は、ダークグレイの背広に、手にはコートと鞄を抱えていた。どうやら仕事の帰りらしい。男らしい端整な顔には、一日の仕事の疲れが滲んでいた。
弁護士になって一年目の宗輔は、ここから五駅離れた法律事務所に勤務していた。
職業柄、いつもスーツをピシッと着こなし、理知的な見た目の宗輔は、頭の中身も格別にできがいい。学校の勉強は不得意だった結太とは大違いの尊敬できる優秀な人だ。
しかし性格は、『若いのに頑固で偏屈。しかも口が悪い』と知人や友人らから評される、いささか気難しいところがあった。
「いらっしゃい。お待ちしていました」
結太が、にっこりと笑顔を向ける。幼稚園では、園児や同僚らに好評の『よしはらせんせーのはなまるえがお』だ。
宗輔は、結太の笑顔を無表情で一瞬だけジッと見おろし、表情を変えぬままパッと目をそらした。まるで苦手な生き物を相手にするかのような態度はいつものことだ。宗輔は結太に対して親しい態度を取ったことはない。
「今日は何の用があってわざわざ俺を呼んだ?」
結太の挨拶を無視して部屋を見渡す。
「えと、今日は父さんと母さんの一周忌じゃないですか。法要はこの前の日曜日にお寺ですませたけど、会食はしなかったので、今日ふたりで食事でもしながら語りあいたいかなあと」
結太は奥にある和室を指さした。そこには小さいが仏壇もおかれている。できれば、お線香の一本でもお願いしたいと思って頼んでみたのだが、宗輔は冷たい眼差しを向けただけだった。
「そんなことで俺を呼んだのか」
「そんなことって。今日は、宗輔さんのお母さんも亡くなられた日なんですよ」
宗輔と結太は、四歳違いの兄弟だった。けれど血のつながりはない。宗輔は義母の連れ子で、結太は父親の連れ子だ。そして結太の実母は、結太を産んですぐに死んでいる。
「一周忌はこの前終えた。会食は必ずしも必要じゃないだろう」
「そんな」
相変わらずの冷淡な態度に悲しくなる。
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