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第14話

「ど、どうもすみません」  なぜ自分が謝らなければならないのか、よくわからないままそれでも謝っておく。濡れたスーツの入った袋と他の荷物を受け取り、持ってきたバスタオルで赤ん坊を包んでいると警察官がきいてきた。 「ところでこの残された赤ちゃんは、成善さんのお子さんで間違いないでしょうか?」 「はい?」 「いや、実は成善さんの隣に座っていた女性が、瞬きする間に彼がいきなり消えて、この赤ん坊が残されていたと証言されたのですが、彼は最初、子連れではなかったとも言っていたんですよ。もしかしたら、彼に全く関係ない子供かもしれないので」  言われてみれば、この子がどこからきたのか結太も知らない。それならば、赤ん坊はこのまま警察に預けたほうがいいのだろうか。 「……あの、隣にいた女性は、宗輔さんがいきなり消えたと言ったのですか?」 「ええ、そうですね、嘘みたいな話ですが」  結太は昨夜のことを思いだした。宗輔はエレベータの中で突然消えて、代わりに服の中にこの子が残された。そして今朝、赤ん坊は消えて、新生児用の紙オムツをつけた宗輔がベッドの中にいた。  宗輔が消えるとこの子が現れて、宗輔が戻れば、赤ん坊は消える。  しかも、この現象は、今回で二度目だ。  ということはまさか。 「いやいや」  結太は自分の想像を頭を振って否定した。  けれどアウアウと口を動かしながらつぶらな瞳で見あげてくる赤ん坊は、宗輔に似ていなくもない気がする。 「……まさか」  そんなことがあり得るだろうか。この子供が、――彼だということが。 「もし、関係のない子供だったらどうなるんですか」 「本当の親を探さないといけないでしょう」 「見つからなかったら?」  警察官は駅員と顔を見あわせた。 「そのときは、しかるべき処置を取って、まあ、どこかの施設にでも」  結太はブルッと身体を震わせた。  もしも、この子供が何かの超常現象で赤ん坊になった宗輔だったとしたら。そして、もしも、もう二度と大人に戻らなくなるとしたら。彼と離れ離れになってしまう。 「あの、この子は兄の子供です。兄が帰ってきたら遺伝子検査してもいいです」  結太は慌てて言った。

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