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第17話

 昨日に引き続き、今日も朝になると赤ん坊が消えて、紙オムツをあてた宗輔がベッドで寝ていたのだからきっとそうだ。というか他の理由が浮かばない。全くもって理解の範疇(はんちゅう)を越えた現象ではあるのだが。 「お前。俺が憶えてないからってふざけたことを……」 「嘘だと思うのなら、高崎駅前交番に電話して聞いてみてください。俺、昨日、赤ちゃんになっちゃった宗輔さんと荷物を高崎まで取りにいったんですから」  こっちも困り顔で、むぅ、と反論する。あんなに大変な思いをして迎えにいって、ヘトヘトになりながら戻って世話をしたのに。礼のひとつもなく疑われたままだなんて。  結太はベッド脇にあったスマホを手に取って、高崎駅前交番に電話をかけた。それを宗輔に渡す。宗輔は怪訝な表情をしたものの、スマホを受け取り警察官と話しだした。  通話を終えると、どうにも納得のいかない表情でため息をつく。 「何がどうなってるんだ……」 「それは俺にもさっぱり」  そして、ハッと顔をあげた。 「俺の荷物は」 「ありますよ。ちゃんと持って帰ってきました。玄関においてます」 「まずい。今日は浜松にいって証人に会わないといけない」  宗輔はベッドをおりて玄関まで走っていった。そしてそこで、また袋に入った皺くちゃの背広を発見した。 「濡れてる」 「ですからそれは」 「……」  この世の終わりみたいな顔になった宗輔に、結太は同情を感じて声をかけた。 「俺の服、着ます?」

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