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第18話 子供の世話は大変
数時間後、結太は、実家に戻り新しいスーツを着た宗輔と共に、浜松ゆきの新幹線に並んで座っていた。
「どうしても、俺がついていかなきゃならないんでしょうか」
「そうだ。俺に万一のことがあったら、お前が世話をするためだ」
「まあ、今日は日曜だからいいですけど」
と言いながらも、実は結太は宗輔と一緒にでかけられることを嫌がってはいなかった。
元来、世話好きな性格なので困った人は捨ておけない。それに、今まで宗輔とはまともに話さえできていなかったのだ。
彼のおかれた状況が、病気なのか超常現象なのか、それとも何かの呪いなのか、わからないけれど、自分で助けられることがあるのなら何とかしてあげたいという気持ちになっていた。
「……呪い?」
ふと、頭の中に浮かぶものがあって、結太は思わず呟いた。
「そういえば」
隣に座る宗輔に話しかける。
「宗輔さんがおかしくなったのって、もしかして、あの木像を壊した後からですか?」
「木像?」
結太は父親に送られてきた白魔術用の像の話をした。『百日間の魂の浄化』により願いを叶える像に、自分はとある祈りを捧げたこと。そしてその直後、像は壊れ、でてきた煙を宗輔は吸いこんでしまったこと。
「確かにあれを吸った後、ものすごく気分が悪くなって、エレベータの中で意識が途切れた……ということは、俺のこのありえない状況は全部お前のせいだってことになるのかええ?」
横から胸ぐらを掴まれた。
「痛い痛いです。けど、他に理由が思い浮かびません」
「俺にも心あたりはないぞ。だったらこれはアフリカの何とかの精霊の呪いか。おい、あの木像はどうした? まさか捨ててないだろうな」
「大丈夫です。ゴミ袋には入っていますが」
「帰ったらすぐに修理しろ。元通りに戻すんだ。元の、とおりに、な」
凄んだ口調で念を押され、結太はうんうんと頷いた。
「でも、木像が壊れたのは、宗輔さんが俺を押したからですよ」
あのときの状況を思いだしたのか、宗輔が「む」と眉をよせる。
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