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第21話
「先生は、どうなってしまったのですか」
「心配なさらないでください。時間がたてば戻ります」
「本当にマジックなんですかこれ?」
混乱する夫人に言われて「魔術です」と神妙に頷いた。
「話しあいは、終わられたのでしょうか」
「はい、ちょうどさっき」
「では、詳しい説明は、後日、先生より聞いてください。種明かしをしてくれると思います、多分」
卓上に広げられた書類やノートPCを鞄にしまい、背広は自分のバッグにつめて、ポカンとなった夫婦に「ではこれで」と挨拶をして玄関をでる。
駅までの道を急いで歩きつつ、昨日よりも確実に成長している赤ん坊に、華奢な結太は体力の限界を感じ始めた。
「やばい、重い」
この重量では、家までたどり着けない気がする。
結太はスマホを使って、近くにベビー用品店がないか調べてみた。ベビーカーとついでに子供服も買おうと思ったのだ。幸い、駅の近くに子供用品の有名チェーン店があった。
そこまで何とかいき着くも、ベビーカーの値段の高さにビックリする。一万、二万はざらで、中には五万円を超えるものもある。
「まじ? 俺の安月給じゃ結構痛いなあ」
子供服も下着も買わなければならない。仕方なくベビーカーはあきらめて抱っこ紐を購入することにした。レジをすませ、サッカー台でタオルから子供服に着がえさせる。両手に荷物を抱え、胸の前に赤ん坊をぶらさげて、ヒイヒイ言いながら帰路に着いた。家に到着したときは、赤ん坊は空腹でギャン泣き状態だった。
「……わかったわかった」
ミルクを昨日の倍量飲ませて、やっと一息つく。結太もぐったりだ。
居間の真ん中に敷いたラグの上に赤ん坊をおいて、自分も夕食を簡単にすませて、風呂の前にスマホの充電をと思って、ふと気がついた。
「そうだ。証拠の動画とっとこ」
そうすれば、宗輔も納得してくれるだろう。満腹で赤ん坊は機嫌がよくなったのか、手足を持ちあげてバタバタ嬉しそうに振り回していた。
「きゃわわだな~」
のぞきこむと、にっこりと笑顔を返してくれる。本物の宗輔にも笑ってもらったことはないのに。赤ん坊の彼は素直でものすごく可愛い。
結太はチビ宗輔の動画や写真を撮りまくり、そしてその夜は満足して眠りに落ちたのだった。
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