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第22話 大人宗輔

 翌朝早く、結太は隣でうんうんとうなされる声を聞いて目を覚ました。  見ると、大人になった宗輔が、子供服の狭い首周りに喉元を締めつけられて苦しそうにしている。結太は慌てて服を脱がせた。せっかく買った新品の服は所々裂けている。  しまった、眠る前に脱がせておくべきだったと後悔しつつ、これは今夜にでも繕おうと畳んでベッドの横においた。そうしていたら、宗輔が目を覚ました。 「おはようございます、宗輔さん」 「……」  宗輔の顔はいささか疲れている。寝起きなのに。 「亀甲縛りされる夢を見たぞ」 「そ、それは悪夢でしたね」  むっくりと起きあがると、無言で紙オムツを脱ぐ。三日目にもなると慣れたものだ。 「宗輔さん、朝ごはん作りますから、食べてってください」 「……ああ」 「ついでに食べながら、話もしたいですし」 「そうだな。昨日はどうなったか、聞いておかないと」  宗輔の背広はハンガーに吊るしてクローゼットにしまってあった。彼がそれを身に着けている間、自分は台所で朝食作りに取りかかった。トーストやハムエッグなど、定番のものを幾品か用意する。ダイニングにスーツ姿の宗輔がやってきたので、昨日撮っておいた動画を観てもらった。 「どうです? 可愛いでしょう」 「確かに、俺の子供のころに似ていなくもないが」  宗輔がスマホをじっと見つめる。結太は木像と一緒に箱に入っていた手紙も差しだした。ふたりで朝食を食べながら書かれた内容を吟味する。 「百日間の魂の浄化、って何なんだ」 「何なんでしょう」 「木像に願いごとをしたのがお前なら、浄化はお前がするべきものじゃないのか。どうしてお前が赤ん坊にならない?」 「けど、あのとき、煙を吸ったのは宗輔さんでしたし」 「俺が像を壊さなかったら、本当はお前が赤ん坊になってたのかもってことか」  憮然とした表情で言う。 「とんだ災難だ。で、お前は何を願ったんだよ」  食事を終えた宗輔が、コーヒーを飲みつつたずねてくる。 「え、あっと、それは……」 「人には言えないような願いだったのか」 「いやそんなことないですが」 「だったら言えよ」 「はあ」  エプロンの裾をもじもじつまみながら、ちらと宗輔に目をやる。訝しげな眼差しとあって、結太は仕方なく願いごとを口にした。

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