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第25話

「出張にいったときも警察から電話があって驚いたんだが。まさかこんな不思議なことが起こるとは」  どうやら宗輔は変身のことを隠さず宮本に伝えていたようだ。仕事に支障が出ると周囲に迷惑をかけてしまうからだろう。 「本当にその通りです」  結太はお茶を飲みながら、事務所内をぐるりと見渡した。  広めのフロアには事務机が並び、奥に会議室が見える。繁盛しているのか清潔感があって、落ち着いた雰囲気に設えられていた。優良な弁護士事務所のようだった。 「しかし、信じられんことだけれど、これが現実となると……彼の担当する事件は他の人に任さないといけなくなる。こんな調子でいきなり子供になられたら仕事にならない」 「す、すみません」  思わず謝ってしまう。けれど原因は自分にある。このことで宗輔がクビになってしまったらどうしようかと心配になった。 「どうか、兄を辞めさせないでください」  頭をさげると、宮本はいやいや、と手を振って結太の頭をあげさせた。 「宗輔くんは、僕の大事な友人の息子さんだから。簡単に辞めさせたりするつもりはないよ。彼はとても優秀だしね。まあ、とりあえず当分の間、様子を見ることにして今後のことはまた彼が大人になったら話しあおう」 「はい、ありがとうございます。兄をどうぞ、よろしくお願いいたします」  もういちど、深く頭をさげて礼を言う。宮本は親切そうな弁護士だった。それに安心する。 「強面も赤ちゃんになると可愛いわねぇ~」 「やっぱり昔からイケメンだったのね、成善さんは」  妙齢の女性事務員らが、代わる代わる抱っこしてチビ宗輔をあやしてくれる。  その姿を見ながら、結太は宗輔が『異変があったらすぐに結太に連絡するように』と宮本に伝えておいた理由を理解した。  なるほどこの女性らに紙オムツをあてられる事態になったら、自分でも恥ずかしくて死ねるなと、納得する。  結太は女性事務員から宗輔を受け取ると、彼女らと宮本に挨拶をして事務所をでて、宗輔と荷物を車につめこみ、その日は家へと戻ったのだった。

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