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第26話 宗輔の家へ
「昨日の変身は午後五時三十七分だったな」
「でしたね。それが何か?」
「日没の時間だ」
「はあ。ということは」
「ああ、俺は日が沈むと、なぜか赤ん坊に変身してしまうらしい。で、日の出とともに元に戻るというシステムだ。この三日、時間通りに変わっている」
「なるほど」
結太は車を運転しながらふむふむと聞いていた。助手席には宗輔が座っている。
呪いがかかってから六日目の今日は祝日。ふたりは結太の車で宗輔の家に向かっていた。毎日、夕方になると宗輔が赤ちゃんになり、翌朝大人になって目覚めるので、もういっそのこと呪いが解けるまでは一緒に暮らしたほうがいいんじゃないかという結論にお互い達したからだった。
それで、着がえなどの当面の必要物資を、彼の実家まで結太の車で取りにいくところだった。
車で一時間ほどの距離を、今後のことを話しあいながら移動する。
「赤ん坊の俺は、毎日少しずつ成長した状態でやってくると、お前は言ってたな」
「はい。今は一歳半くらいじゃないでしょうか」
「ということはつまり……」
宗輔はちょっと目をとじて、考えこむ表情になった。顎にあてた指の先を、タクトのように何度か小さく振ってみせる。
「呪いがかかってから六日で一歳半。この計算でいくと、多分、百日前後で今の年齢に追いつくことになる」
「ということはつまり」
「つまり何だ?」
「すいません。考えてませんでした」
「お前」
信号待ち中、横から頭をグリグリされた。
「つまり、百日間の魂の浄化というのは、その間に今までの人生を振り返って、反省すべき部分を更生しろってことなのかもしれん」
「なるほど」
「別に俺は、振り返る必要はないんだがな」
「ならなぜ呪いが」
「お前のせいだろがっ」
またグリグリされた。痛くはなかったが。
あれから、壊れた木像は、接着剤を使って丁寧に修復して居間に飾ってある。けれど、宗輔の変化はおさまらなかった。きっと直しただけでは呪いはなくならないのだ。
しかし他に呪いを解く方法はわからない 。
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