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第32話*

「お前も俺の前で、ソレをつけてみろ。そして今日一日はいてすごせ。そうしたら少しぐらい俺の絶望が理解できるだろ」 「ええ、そんな」 「さあ、脱げ」 「嫌ですよ」  結太は拒否したが、これは紙オムツが恥ずかしいからではなかった。一枚無駄にするのがもったいなかったからである。紙オムツといえどもタダではない。結太は薄給である。 「お前は自分が嫌なものを人に強要するのか。自分がされて嫌なことは人にしてはいけませんと幼稚園で教えるだろ」 「けど、宗輔さんには必要なものなんですよ。もらしたら洗濯物も増えます」 「俺はもらさん」 「絶対にそうとは言えないです」  むむ、と相手の顔に怒りが浮かぶ。宗輔も三歳の自分はコントロールできない。けれど、それが余計に腹立たしかったようだ。 「全部、お前のせいだろうがっ」  問答無用、と押し倒される。居間のラグの上に結太は転がった。 「さあ、脱げ」 「ええっ……嫌っ」 「何だと」  結太の抵抗に、宗輔の背後にブリザードが吹く。冷たい怒りに包まれて、宗輔の顔つきがものすごく意地悪いものに変わった。 「なら、俺がはかせてやる」 「へっ」 「お前が毎日、俺の局部を好きに触りまくっているのなら、俺にもいっぺんぐらい触らせろ。それで今までのことは許してやる」 「な、何でですか」 「というか、俺の世話をするのがお前だから許せんのだ」 「どうしてですか、あんなに一所懸命してるのに」 「お前の前で恥ずかしいことはしたくないからだっ」 「へえっ?」  無理矢理に、スウェットパンツとその下のボクサーパンツを脱がされる。スポーンと取り去られて、下肢が丸だしになった。 「あ、ひゃあ」  結太の、成人男性にしてはいささか貧弱なモノが、ぴょんと飛びでてくる。それに宗輔が目を瞠った。 「……」  急に無言になって、股間を見つめてくる。脱がせたのは自分なのに、一瞬戸惑ったような表情になった。 「見ないでくださいよぉ」  息子に自信がなかった結太は、身体を丸めて視線から逃げた。  困り顔になった結太に、宗輔は何かいけないことをしてしまった子供のような決まりの悪い、けれど後にも引けない複雑な顔をする。しかしそれもほんのわずかで、すぐにまた意地の悪い表情になった。というか、結太の股間を見て、さらに奮起したような様子になった。 「さあ、これをつけろ」

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