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第35話*

 宗輔は結太の声を聞いていなかった。まるで何かに操られでもしているかのように、心ここにあらずの様子で結太の硬くなった分身をぐにぐにともんできた。 「だめ、でちゃう、そんなことしたら、で、ちゃいます」  こんなこと、人にされたのは初めてだ。それも、兄である宗輔にだなんて。背徳感と快感で頭の中がグルグルする。 「だせ。俺の前で」 「やだやだ……」 「他の奴の前で、だしたことあるのか」 「な、な、ないです」 「だったら、俺に一番のりに見せろ」  何でですか、という声が、喘ぎに変わる。宗輔の手は、こういった行為に慣れているようには思えなかった。どちらかというと乱暴で、焦っているかのような動かし方だった。紙にくるまれた状態で扱かれるのも初めてで、鈴口にあたるときつい刺激がくる。 「ああ、も、や。やだ、いっちゃう……」 「いけよ」 「ふっ、……うう、ひ、ひど、い……っ」  涙もでそうだった。けれど、宗輔はそんな結太の表情も余すところなく見ておこうとするかのように、真剣な目を向けてくる。宗輔の瞳の中にある感情の正体がわからない。だが男らしい眼差しが、自分の乱れた姿に注がれていることに、背筋が震えた。 「あ、……あ、も、もうっ。や……い、んっ、……いっちゃい、ます……っ」  混乱したまま、快感に際を越えさせられる。足を大きくわななかせて、泣きべその顔になって、結太はびくびくっと吐精した。 「あ、ああッ……あ、ぅ、……っ」  全身を震わせ、甘い声をあげてしまう。宗輔の大きな手は、結太が達するまで、そして達した後もなかなか離れていかなかった。 「やだ……。もう、宗輔さん……何でっ」  咎めるように睨みあげると、涙が一筋眦から落ちていく。  それでやっと宗輔は我に返ったように、呆然と結太を見おろしてきた。

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