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第36話 宗輔反省する
宗輔は自分が何をやったのか信じられないような顔で、少しの間、ポケッとしていたが、急に正気に戻ると、泣きだした結太にオロオロし始めた。
「……おい、泣くな。……ていうか」
周囲に目を泳がせたり、焦って結太の肩をなでたりしてくる。
「……悪かった。ていうか……俺」
感情が言葉にならないらしく、意味不明な呟きをもらした。
「ああ、そうだ、でたんだから拭かなきゃな」
と言って、うわの空でおしりふきを手にする。
「さあ脱げ」
「いやですうっ」
おしりふきを引ったくって、寝室へと駆けていった。
バタンと扉をしめて、まだドキドキしている心臓を押さえる。そして、宗輔のしたことをひどいと思いつつ、自分も彼に無神経なことをしていたのだと今更ながら気がついて、ひどく落ちこんだ。
「……小さい宗輔さんの世話をちゃんとしてること、喜んでくれると思ってたのに。俺の勘違いだったんだな」
何よりことの発端が自分のせいなのだから、世話をしてあたり前だったのだけれど。
自分で自分の後始末をして、着がえてから部屋をでる。鈍感だったことを詫びなければと思ったが、宗輔は家からいなくなっていた。
「……あれ」
どこかにでかけてしまったらしい。
「どこいっちゃったんだろ」
黙ってでていかれたことに、寂しさを感じてしまう。
結太は罪悪感を拭うために、宗輔の好きなメニューで昼食を作ることにした。ナポリタンスパゲティにハンバーグ。彼は割と子供っぽい料理が好きだ。
しかし宗輔が戻ってきたのは夕刻だった。きっと顔をあわせるのが気まずくて、どこかで時間を潰していたのだろう。けれど変身する時間が近づいてきたので仕方なく戻ってきたようだ。玄関がひらく音がして、それから居間に入ってきた彼は、少し目許を赤らめていた。
「結太」
「はい」
結太がエプロンで手を拭きながら台所からでる。
宗輔の前にいくと、彼はポケットから封筒をだしてきた。ATМ用現金封筒だ。それを無造作に手渡してくる。封のされていない袋の中には、現金が十万円入っていた。
「これは……」
これでさっきのことは、なしにしろとでも言うのだろうか。もしかして慰謝料か。驚く結太に、宗輔は顎をしゃくった。
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