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第38話 チビ宗輔の少年期

――悪かった、反省している。  宗輔が結太に無体なことをして謝罪した後、彼の態度はがらりと変わった。  以前と違い、気づかわしげなものになったのだ。  前のような意地悪な態度は少なくなり、食事の準備や洗濯に感謝するようにもなった。手伝いさえしてくれるようになった。  宗輔の変化に結太は戸惑ったけれど、彼との距離が縮まったのは嬉しかった。  休日には居間でスナック菓子をつまみながら映画も観たりして、初めての打ち解けた関係に、結太は嬉しくて舞いあがった。そして数日後にはチビ宗輔の紙オムツも無事卒業し、ストレスの元から解放された宗輔は機嫌もよくなった。  ――このまま、宗輔さんとずっと、暮らせればいいのに。  段々とそう望むようになってきている。  しかし宗輔と親しくなるのとは反対に、チビ宗輔は結太の元にやってくるたび、精神が不安定になりつつあった。それはきっとチビ宗輔が六歳に近づいていたせいだろう。六歳は、彼の両親が離婚した歳であった。 「え? まだきていませんか?」  夕刻の幼稚園。いつもならとっくに宗輔がきている時間なのに、その日はまだ現れていなかった。 「おかしいな……何かあったのかな」  宗輔の事情を知る同僚らにたずねてみても知らないと言う。時計を見れば、日没まであと十分であった。  呪いがかかってから二十五日目。今日のチビ宗輔は六歳、小学一年のはずだ。心配になった結太は、園長に断って自分のスマホをチェックした。するとそこには、メッセージが届いていた。 『電車が人身事故でとまった。間にあわないかもしれない』 「まずい」  結太は青くなった。  人の多い電車の中で、子供に変わってしまったら大変なことになる。騒ぎになるだろうし、チビ宗輔も不安がる。 「すいません、ちょっとださせてください」  園長に早退を頼んで、車で駅に向かった。  途中、信号待ちのときにスマホをチェックすると『動きだした。ギリギリ間にあうかもしれない』とある。『車でそっちに向かってます。駅前ロータリーにいて』と打ちこむ。変身まであと三分。結太は急いで車を走らせた。  駅に着いて、ロータリーをぐるりと一周してみる。が、宗輔の姿はなかった。結太はあいたスペースに車をとめて、駅付近をウロウロと探し回った。時刻は午後六時。 「やばい」  タイムリミットだった。宗輔が子供に戻ってしまっている。

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