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第39話
結太は大急ぎで駅の構内や駅前の通りを走って回った。けれどそれらしき子は見あたらない。
駅前交番に駆けこんで、迷子がきていないかたずねるも、そんな届け出はないと言われた。迷子がきたら連絡くださいと告げて、また駅周辺を探す。電車がとまっていたせいか、改札やバス停にはいつもより人が多く行き来していた。
宗輔はバスにものれなかったろう。だったらタクシーかと、タクシーのり場に走る。そこにも人が多くいた。よく見るとのり場の前に設置されたベンチに、見覚えのある荷物がおかれている。近づいていけば、それは宗輔の鞄と上着だった。
「こっ、これ、どうしたんですかっ」
客がのりこもうとしていたタクシーの運転手を掴まえて大声できく。運転手は、ああ、という顔をした。
「近くに落ちていたんだよ。今、警察が取りにくるはず。あんたのだった?」
「いえ。違うんですが。持ち主、探してて」
「さあ。それしかなかったから、持ち主は知らないよ。後は警察に聞いて」
運転手は客をのせると、手をあげて発進してしまった。
残された結太は、呆然と荷物を抱えて立ち尽くした。やってきた警察に、荷物は兄のものだと言って迷子の捜索をお願いする。服装をきかれて、大人のスーツを着ているはずと伝えると怪訝な表情をされた。
日が沈み、宵闇が迫ってきている。六歳の宗輔はどこへいってしまったのか。不審者にでも攫われてしまったらどうしようと、いても立ってもいられなくなる。結太は真っ青になって、駅前の通りを何度も何度も往復した。
やがて七時になり、八時もすぎて、九時になると焦りもピークに達し、不安すぎて気分まで悪くなってきた。警官も駅周囲やステーションビルに問いあわせたりして探してくれたが見つからない。小さな宗輔が、いくとしたらどこだろう。知らない場所に放りだされて、彼が向かいたくなるところと言えば……。
「もしかして」
ハッ、と気づいた結太は、急いで自分の車に戻った。
エンジンをかけて発進させると宗輔の実家に向かう。まさかとは思うが、けれど、自分が宗輔だったらまず家に戻りたくなるだろう。
駅から宗輔の実家までは駅三つ分ある。そんな距離を子供がひとりで歩いていけるとは思えなかったが、一縷の望みをかけて車を走らせた。
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