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第57話
うっすらと明るい中で、宗輔が小さな声で話しかけてきた。
「ね、そっちに、少しだけ、いってもいい?」
「うん、いいよ」
昨日と同じことを頼まれる。
きっとまだ、精神的には落ち着いていないのだろう。上がけをめくると、そろそろとやってくる。結太の隣で横向きになり、ぴったりと張りついてきた。結太の腕に自分の腕を巻きつける。
初めて会った相手にこんなにも気を許して懐いてくる子供は幼稚園でもときどきいる。そういった子供は大抵、愛情に飢えていることが多いのだった。
「ひとりでずっと頑張ってきたんだね」
偉いなあと尊敬する気持ちで囁く。すると宗輔はギュッと腕に力をこめた。
やがて一日動き回った疲れからか、とろりとした眠気がやってきた。結太の瞼が重くおりたころ、少年宗輔が小さく呟いた。
「お兄さんって、ヘンな人だね。初めて会った俺に、どうしてこんなに優しくしてくれるの」
結太に話しかけているというよりは、独り言のようだった。
「それは、……宗輔さんのことが、好きだからだよ」
答える結太は半分夢の中だ。
「俺のこと、好きなの?」
「うん、大好き。出会ったときから、宗輔さんのことが、ずっと好きでした。この前、たずねられた後にやっと気づいたんです……」
眠気に包まれて思考も曖昧になっていた。だから自分が何を言っているのか、よくわかっていなかった。ほんの少し、瞼を持ちあげて、眠りに落ちる直前の風景を見る。
目の前の少年は、訳がわからない様子で、けれど、顔を真っ赤にしていた。
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