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第61話*
「学生時代は『成善は偏屈だ』って噂されてたから好きになるような相手もいなかった」
「そ、そうなのですか」
「それに俺は、最初につきあう相手と結婚するって決めてたからな」
「ええっ」
今時そんな古風な。
「それが、男の責任ってもんだろうが」
何と潔くて真面目なのか。さすが正義の職業弁護士。いや弁護士全員がそんな訳はないだろうが、彼だけ特別に貞操観念が高いのだ。
「でも、だったら、俺じゃまずいでしょ」
「どうして?」
「結婚できません」
男同士ですから。
「法律は生き物だ。だからこの先どうなるかはわからん。それに、お前とはもう一回ヤってる」
「へ? してましたっけ?」
いつのことかと目を見ひらく。
「しただろ。お前にアレをはかせたとき」
アレとは。紙オムツのときか。
「ああ、あのとき」
思いだして、また顔が赤くなった。
「あの後、俺はどうやって責任取るべきか悩んだ」
「……宗輔さん」
「自分を制することができずに手をだしてしまったからな」
そしてまた、唇にちゅっと触れてくる。刺激されて、結太の下肢が甘く疼いた。もじもじと足をすりあわせると、結太の息子がオハヨーと伸びあがってくる。
「やば」
朝の生理現象が加わってか、いつもより元気に飛び跳ねた。宗輔とは密着している。変化もすぐにバレてしまうだろう。顔を赤らめた結太に、宗輔はちょっと意地悪く微笑んだ。
「今日は日曜だ」
「あ、そうでしたっけ」
「だから、急いで起きなくてもいい」
指で結太の首筋をなであげてくる。ゾクゾクと触れられた場所から鳥肌が立っていった。
「……くすぐった」
目を細めて身体を震わせると、宗輔の眼差しにいつもと違う雰囲気が生じる。それは昨夜、少年宗輔が、結太を憧れの目で見てきたものに似ていた。何とも言えない、大切で愛おしいものを見るような、それでいて焦れているような眼差しだった。
「宗輔さん……」
身体の内側に、火がともったようになる。胸のあたりからジンとした痛みがきた。
「この前は乱暴に触って悪かった。……今度は、そんなことしないから、もっと触ってもいいか」
言いながら、指先がうなじを這っていく。皮膚の薄いところをなでられて、ぞわりと快感がきた。
「触りたいんだ」
それに感化されて下腹にとろりと重い欲望がたまっていく。
「……はい」
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