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第66話*

 毎度徒労に終わる訪問も、決して苦痛ではない。以前は見ることのできなかった宗輔の生活を間近で感じられるのは嬉しかったからだ。 「予定ではあと一週間で願かけは終了だ。そうしたら、夜も一緒にすごせるな」 「はい」 「毎晩いじめてやる」  宗輔の手が、結太の胸や腹をなでてくる。 「……あ、っ、ん、くすぐったぃ、です」  身をよじると、さらにぎゅっと抱きしめられた。 「休日の昼間しか触れないんじゃ、欲求不満だ」  耳にかるく噛りつきながら、熱いため息をもらしてくる。 「早く目いっぱい好きにしたい」 「あ、ひゃ」 「お前のこと、全部、まだ知らないからな」  そう言って、結太の足の間に手を滑らせた。服の上から大きな手で刺激されると、悪い遊びを覚えた息子はすぐにナニナニと興味津々に伸びあがってくる。 「……あ、ダメ、です。まだ……」 「そうか? もうそろそろ、だと俺は思ってるんだけどな」 「……ん」  そろそろ、と言うのは、ふたりの身体をつなげたいということだ。宗輔は初めて知った好きな相手との愉しみにものめりこみ、結太の身体を隅から隅まで開発しようとしている。元々学ぶことには熱心な質だ。男同士の行為のやり方から悦ばせ方まで、余すところなく知識として仕入れてきては結太に試そうとする。おかげで休日の結太は日没までドロドロの状態だ。 「お前用特製ローションも作ったしな」 「まじですか」 「そのうち、ディルドも手作りしてやる。ネットで材料買って」 「そこまでしなくても」 「全部、自分でやりたいんだよ」  研究熱心なのはいいが、優秀な人間というのは度を越えて好きなことに没頭するらしい。この前は、法律関係の難解な書物を眺めながら、ネットで購入したアナルビーズに紙やすりを一心にかけていた。それを見つけたときは、真面目なんだか変態なんだか宗輔のことがよくわからなくなったものだった。  宗輔はひょいと結太を抱えあげると、「日没までまだ一時間ある」と言って、寝室に連れこもうとした。今日はもう朝からさんざんしまくったのに、まだしたいというのか。 「宗輔さん、車で送れなくなります」 「そのときはタクシー呼ぶさ」 「薄給だって言ってたじゃないですか、もったいない」 「お前とすごす時間を減らすほうがもったいない」 弁護士というくらいだから弁が立つ。結局、結太はタクシーがくるまで目いっぱい喘がされたのだった。

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