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第71話

 結太は目を瞠った。声を出そうにも、乾いた喘ぎしかでなかったが、宗輔のやったことに驚いて心臓がとまりそうになった。 「大丈夫だ。これくらい。大したことない」  宗輔が木像の上に自分の血を滴らせる。  ぼたりぼたりと血がたれて、黒い像がさらにどす黒くなった。  宗輔は顔を木像に近づけると、先端についた鳥の骸骨に口をつけた。薄暗い部屋で、スマホの光に照らされた宗輔が、禍々しい像と口づける。すると、その口から黄緑の煙がすうっと立ち昇り、像に吸いこまれていった。  同時に、結太の身体がフッと楽になる。今まで自分にまとわりついていた邪気が抜けて、像に吸いこまれていくような気がした。 「……あ」  痙攣が治まり、生気が手足に戻ってくる。 「……そうすけ、さ」  結太が、声を振り絞って呼んだ。 「結太」  ほんの少しだけ、動くようになった手を持ちあげると、宗輔が結太を抱きあげてきた。 「どうだ? どうなった?」 「何か……身体から、抜けてった、みた、い」 「抜けたか」  宗輔が結太を抱きしめる。 「そうか、よかった。……術がきいたんだな。よかった、……よかった。どうなることかと心配したぞ……」  宗輔の声は、安堵に掠れた。 『結太くん、大丈夫かね? どうなった』  大泉がきいてくる。 「大丈夫です。先生の施術は無事に成功したようです」  宗輔が言うと、電話の向こうで大泉も、大きく安堵のため息をついた。

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