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第72話 解呪

 解呪が終わると、結太と宗輔は大泉に礼を伝えて電話を切った。  その後、急いでタクシーで近所にある病院の夜間救急へと向かう。宗輔の腕は五センチほど切れていた。傷を縫合して包帯をしてもらい痛みどめと抗生物質を受け取って治療を終える。結太のほうは、病院に着くころにはすっかり元気な状態に戻っていた。まるで夢だったかのように、身体の不調は消えていた。  呪いを無事に解くことができたのは、大泉が偶然にも電話をくれたおかげだ。もしも連絡がなかったら、結太は今ごろ、原因のわからない高熱に苦しめられて命を落としていたかもしれない。『急に思い立ってね、電話をしなければと思ったんだ』と言った大泉の言葉に、結太はもしかして、天国の父が息子の異変を知って導いてくれたのかもしれないと感じた。  しかし診察の必要がなかったことには安心したけれど、結太は宗輔の処置が終わるまで、ずっと落ちこんでいた。  宗輔が自分を助けるために自ら腕を刺した。そのことがひどくショックだったからだ。 「結太」  うす暗い夜間出入口前のベンチに腰かけて、泣きそうになっていると、会計を終えた宗輔がやってくる。  結太が立ちあがると、包帯を巻いた左手を守るようにしながら近よってきた。 「……ごめんなさい。宗輔さん、お、俺の、せいで……」  真っ白な包帯を見た途端、言葉がつまってしゃくりあげてしまう。そんな結太を宗輔は片腕を回して抱きよせた。 「気にするな。大したことはなかったから」 「で、でも……」 「結太」  誰もいない廊下で、結太を抱きしめる。 「これくらいの傷、どうってことはない。それよりもお前が精霊に連れていかれなくてよかったよ。呪いなんかでお前を失うことになったら、どうしていいかわからなかった」 「宗輔さん」  宗輔が結太の背中に手をあてて、なだめるようにさすってきた。

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