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第73話

「お前は百日間、俺を赤ん坊から育て直してくれた。ガキのころから抱えていた鬱屈も寂しさも、全部、ひとつずつ、毎日丁寧に理解していってくれた。おかげで俺は、自分の本心を知ることができたし、以前よりずっと幸せになることができた。お前は俺にとって、大切な、何より大事なパートナーなんだ。だから、俺の手で助けてやることができてよかったんだよ」  優しい言葉に、涙をこらえることができなくて、鼻をグスグス鳴らす結太に、宗輔はそっと顔を近づけてきた。 「泣くなよ。可愛い顔がぐちゃぐちゃだ」  盗むようにして、宗輔がちゅっと口づけてくる。結太はビックリして目を瞬かせた。 「そ、宗輔さん」  驚いて周囲に目を泳がせる。誰もいないとはいえ、大胆な行為だった。  結太の狼狽えぶりに、宗輔がいささか悪い顔で微笑む。宗輔がいつも通りの様子を見せてくれたことに、結太は目を瞠り、それから緊張がほどけるように気持ちが落ち着いていった。 「さあ、もう家に帰ろう。呪いの解けた祝いをまだしていないだろ」 「はい」 「腹へった。お前の作ってくれた海老グラタンが早く食べたい」 「はい」  そうして、自宅へと戻り、ふたりでやっと魔術から解放された乾杯をしたのだった。

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