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②顕人side

夢見は最悪だった。 学生時代に片想いをしていた男が、僕に結婚の報告に来た日の夢……。 それ以来、会っていない。 そして、その恋愛と呼べるかわからない青春に、今も囚われている。 自分の中では振り切ったつもりだった。でも、時々こうやって、その顔を忘れさせないように夢に出てくる。 ―――― 「金曜、か…。」 今日は久々に行きつけのバーに行くことにした。 ゲイバーね。 マスターが美人でかわいいんだ。 カランカラン 「いらっしゃい。あ、顕人さん!お久しぶりです!」 「あぁ、忙しくてこられなかったんだ。君に会いたくなってしまってね。」 「ふふふっ、それは嬉しいです。」 「カイピロスカ、頼むよ。」 「はい、わかりました。」 そうしてカウンターで一人で酒を飲んでいたら、挙動不審の青年が一人、キョロキョロしながら入ってきた。 顔はよく見えない。 ひとつ空席を挟んで彼が座った。 どうやら今日は散々だったらしい。 ハイペースでなくなる酒、飲みすぎているのは一目瞭然。 気になって、声をかけた。 「お兄さん、飲みすぎじゃない?」 「…のみすぎてないもん。」 「飲みすぎだよ。お水飲みな。」 顔をあげさせた。 どことなく似ていた。僕が今でも囚われている顔に。 「んぅ。かいぴろすか、おいしいから。……だめ?」 上目遣いでこちらをみてくる。 「っ、あんまりかわいい顔しないで。おじさん君のこと持って帰ってしまいそうだ。」 「おもちかえりぃ?おれおとこなのにぃ?」 「ああ、そうさ。君はかわいいからね。おじさんと一緒に来るかい?」 「んー…。いく~。」 「そうやって簡単に知らない人について行ってはダメだよ。マスター、僕たちは帰るね。この子の分も払うよ。いくらかな?」 お金を払い、彼をつれてホテルへ向かった。

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