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夢路-yumeji-2

家に着くなり、浴室に入りシャワーを浴びる。 ベタベタが溶けていくように落ちていき、さっぱりとする。 「ふぅ…。」 特に何もしていないのに疲れたな…。 広いソファの端っこに座り、ぼーっとする。 話す相手も居ないし、話す事も無い。 何にもないんだ。俺には。何も。 「しゆちゃん、可愛いーっ。」 「え…?」 声が、聞こえた気がした。 在り処は分からず、辺りを見渡すが部屋にはやっぱり自分一人。 なんだか、馴染みのある。温かい声…。 しゆちゃんって…、俺の事か? そんなあだ名で呼ばれた事が無いはずなのに、何故かストンと自分の事だと受け入れる事が出来る。 今日は…。寝よう。 考える事を辞めた俺は、寝室の扉を開ける。 無駄に広いベッド。 中央に寝転がり、ゆっくり目を閉じた。 「み…。」 無意識に開いた口から言葉が漏れる。 何を言おうとしているのか、止まった思考回路では答えに辿り着かなかった。 暗闇に落ちる…。

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