107 / 227

夢路-yumeji-3

ふわふわと夢見心地な世界で、何も無い所に両手を伸ばす。 真っ白なその場所は、俺一人。 もう独りにしないで欲しい。 孤独は寂しい。 まだ、一緒に居たい。同じ時を過ごしたい。 ふわふわふわふわ…。 目を開けても何も無くて、手を伸ばしても何も掴めない。このまま何処かに飛んでいくのも有りだな。 不意に温かい何かが俺を包む。 さっきの海水とは真逆で温かい。 「…ゆ。し…ちゃん…。しゆちゃん…。」 また、そのあだ名。 けど何だろう。聞き慣れている声。この温もりも凄く安心してしまう。 「みぃ…くん。」 もっと…。もっと頂戴と思う余りに温もりを強く抱き締める。 何も見えないけれど何かがある。 それは俺にとって、とても大切でかけがえの無い事の様な気がする。 「…っ。っん…はっ。」 急に息がしづらくなり、酸素が喉を通らない。 く、苦しい…。 助けて…苦しいよ。助けて…みぃくん…。 __________________ 明け方、少し朝日が昇り始めカーテンの隙間から段々と光が差そうとしている頃、ベッドの中で揺れる物影がある。 「しゆ…。しゆ。」 瞳を閉じて、眉をひそめる恋人を優しく包み込んでキスをしている。 ちゅ…ちゅっ… リップ音が何時しか唾液が混じる厭らしい音に変わり、静かな部屋に響く。 「…んんぅ…っふ…みぃ…く!」 パチっと愛おしい恋人の目が開く。 ゆっくりと瞳の焦点が合い、あれ?という表情を見せる。 「しゆ…。可愛い…。」 「みき、や?」 なんでここに?とでも言いたげな顔で頭にハテナが浮かんでいる。 「どうしたの?俺はここにいるよ?」 「みぃくん…。」 切なそうに手を広げて抱き寄せる。 胸に顔を当てて温もりを感じるように、心臓の音がトクトクと鳴っているだけの時間が続く。 「良かった…。夢で。」 小さく呟いた恋人は安心したようで、何が起こったのか分からないけれど無言で強く抱き締めた。 「ちゃんといるから…。ずっと傍に。」

ともだちにシェアしよう!