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夢路-yumeji-3
ふわふわと夢見心地な世界で、何も無い所に両手を伸ばす。
真っ白なその場所は、俺一人。
もう独りにしないで欲しい。
孤独は寂しい。
まだ、一緒に居たい。同じ時を過ごしたい。
ふわふわふわふわ…。
目を開けても何も無くて、手を伸ばしても何も掴めない。このまま何処かに飛んでいくのも有りだな。
不意に温かい何かが俺を包む。
さっきの海水とは真逆で温かい。
「…ゆ。し…ちゃん…。しゆちゃん…。」
また、そのあだ名。
けど何だろう。聞き慣れている声。この温もりも凄く安心してしまう。
「みぃ…くん。」
もっと…。もっと頂戴と思う余りに温もりを強く抱き締める。
何も見えないけれど何かがある。
それは俺にとって、とても大切でかけがえの無い事の様な気がする。
「…っ。っん…はっ。」
急に息がしづらくなり、酸素が喉を通らない。
く、苦しい…。
助けて…苦しいよ。助けて…みぃくん…。
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明け方、少し朝日が昇り始めカーテンの隙間から段々と光が差そうとしている頃、ベッドの中で揺れる物影がある。
「しゆ…。しゆ。」
瞳を閉じて、眉をひそめる恋人を優しく包み込んでキスをしている。
ちゅ…ちゅっ…
リップ音が何時しか唾液が混じる厭らしい音に変わり、静かな部屋に響く。
「…んんぅ…っふ…みぃ…く!」
パチっと愛おしい恋人の目が開く。
ゆっくりと瞳の焦点が合い、あれ?という表情を見せる。
「しゆ…。可愛い…。」
「みき、や?」
なんでここに?とでも言いたげな顔で頭にハテナが浮かんでいる。
「どうしたの?俺はここにいるよ?」
「みぃくん…。」
切なそうに手を広げて抱き寄せる。
胸に顔を当てて温もりを感じるように、心臓の音がトクトクと鳴っているだけの時間が続く。
「良かった…。夢で。」
小さく呟いた恋人は安心したようで、何が起こったのか分からないけれど無言で強く抱き締めた。
「ちゃんといるから…。ずっと傍に。」
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