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願い-negai-3

「しーゆーちゃんっ。おかえり。」 家の玄関を開けると樹矢が出迎えてくれた。 「ただいま。あれ?今日早かったんだな。」 「だって、彦星様は大好きな織姫様に会いに行かないといけないから!ね?愛しの織姫様?」 頭を撫でて額にキスを落とされる。 (そっか…。今日七夕だった…。) 「七夕なのに笹用意するの忘れちゃったなぁ。」 「この歳になって願い事の短冊なんか書かねぇよ。」 リビングに向かって歩きながら会話を交わす。 荷物を降ろした俺は、ソファに座る樹矢の隣へ腰掛け頭を彼の肩に抱き寄せられる。 「乞い願わくば、この時間が永遠に続きますように…。」 樹矢が呟くように言った。 「どうした?」 「ん…?お願い事しただけ!」 織姫と彦星は会えたかなー?と何時もの陽気な声で言いながら、自分の頭を俺の頭とくっつけてくる。 「今日は晴れてたし、ちゃんと会えたんじゃない?」 「年に一回とかホント酷だよねー。俺じゃ耐えられない!」 「いや、あんたは別に耐えなくていいよ。俺がいるし。」 膝に置いていた手を絡ませる。 「しゆちゃん、誘っちゃってる?」 強い眼差しで顔を見つめながら、絡ませた手は樹矢によって強く握り返さたその直後、俺はソファに優しく押し倒された。

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