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悋気-rinki-6

狭い車内に仰向けの体制で、両足は曲げる事しか出来なかった。 こんな所で嫌だ。 と必死にもう片方の手で胸をドンドン押して、バタバタと足も動かし抗うが、体力を使うだけの全く無意味な行動で終わる。 馬乗りになっている樹矢は、俺より身体も大きく手足も長く、より狭そうなのにそんな事はどうでも良いと、行動で訴えるかの如く俺へのキスを止めなかった。 「んっ…っう…。」 何を言っても駄目だと思った。 嫌だと俺が思っているって分かっているのに、行為を止めてくれない。 それはもう、俺が受け入れるしかないんだ。 目を閉じて、俺は抗う事を辞めた。 身体の力を抜き、空いている片方の手は樹矢の背中に回す。 「ふっ…ぅ…っぅ、ん…。」 乱暴なキスは止まらず、俺の服を樹矢は剥がす。 その時に掴まれていた腕は開放され、残ったのはヒリヒリと空気に触れて痺れる感覚だった。 顔を離して、俺の露わになった身体をジロジロと見る。 (そんな見んなよ…。) 恋人に見られる裸は何時になっても慣れなくて、恥ずかしい。 しかも、俺の腰には2日前に樹矢に付けられたキスマークがまだ痣みたいに残っている。 「綺麗だね…。」 ボソッとそう言うと、俺の首筋に噛み付いてきた。 「いっ…っ!」 甘噛みなんてレベルじゃなくて、身体がビクッと震えた。 「しゆ…。」 痛がっている俺を見て、恋人が不敵に笑っているのが車内の暗闇でも分かった。

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