140 / 227
悋気-rinki-6
狭い車内に仰向けの体制で、両足は曲げる事しか出来なかった。
こんな所で嫌だ。
と必死にもう片方の手で胸をドンドン押して、バタバタと足も動かし抗うが、体力を使うだけの全く無意味な行動で終わる。
馬乗りになっている樹矢は、俺より身体も大きく手足も長く、より狭そうなのにそんな事はどうでも良いと、行動で訴えるかの如く俺へのキスを止めなかった。
「んっ…っう…。」
何を言っても駄目だと思った。
嫌だと俺が思っているって分かっているのに、行為を止めてくれない。
それはもう、俺が受け入れるしかないんだ。
目を閉じて、俺は抗う事を辞めた。
身体の力を抜き、空いている片方の手は樹矢の背中に回す。
「ふっ…ぅ…っぅ、ん…。」
乱暴なキスは止まらず、俺の服を樹矢は剥がす。
その時に掴まれていた腕は開放され、残ったのはヒリヒリと空気に触れて痺れる感覚だった。
顔を離して、俺の露わになった身体をジロジロと見る。
(そんな見んなよ…。)
恋人に見られる裸は何時になっても慣れなくて、恥ずかしい。
しかも、俺の腰には2日前に樹矢に付けられたキスマークがまだ痣みたいに残っている。
「綺麗だね…。」
ボソッとそう言うと、俺の首筋に噛み付いてきた。
「いっ…っ!」
甘噛みなんてレベルじゃなくて、身体がビクッと震えた。
「しゆ…。」
痛がっている俺を見て、恋人が不敵に笑っているのが車内の暗闇でも分かった。
ともだちにシェアしよう!