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第3話 幼馴染みです。
そんな俺と山根は母親同士が友人で生まれた時からの幼馴染みだ。生まれた病院も同じで、誕生日は1日違い。ちなみに、俺の方がお兄さん。幼稚園、小、中ずっと一緒。そして、俺にはもう一人幼馴染みがいる。
「...はぁ?また?」
普段は高めの声が、地を這うような低い声になっている。なんて器用な声帯。
「おー。また、だ」それに賛同する山根は弁当を食べ終わるとカバンから菓子パンを取り出し食べ始めた。
「ほんっっっとゲスいわね、くそ尾関」
可愛い顔の眉間には思いっきりシワがよっていて、可愛い口からは汚い言葉がつらつらと出てくる。
「あんなヤリちん、病気にでもなればいいのよ!!」
グサッと勢いよく弁当箱の中のオカズを箸で突き刺した。
「凛、食べ物に罪はねぇぞ」
山根は凛の手を掴んで自分に引き寄せ、箸に刺さった唐揚げを頬張った。
「...っ!だって!だって!悔しい!!あたしの優羽と付き合っておきながら他にも手を出すなんて!!」
「優羽はお前のじゃねぇだろ。そんで、お前は俺のだろが。」
「...謙ちゃん♡」
凛がわかり易くときめいている。
バカップルめ。俺は冷たい目で幼馴染みカップルを見た。
浜口凛はもう一人の幼馴染みだ。
山根はほんとガキの頃から凛一筋で、5人兄妹の末っ子でしかも唯一の女の子である凛を溺愛している兄たちに毎日挑みまくって彼氏の座を勝ち取った勇者である。
もちろん、凛の気持ちもずっと山根に向いていた結果だが。
ちなみに、山根謙三が勇者の名だ。
凛はうっすら桃色の柔らかそうな頬を膨らませて、それでも俺のためにまだブツブツ言っている。
「凛、ありがとう」
凛に向かって微笑みながら言う。
優しい彼女の口から出る嫌な言葉をこれ以上言わせたくなくて。
「...優羽」
つり上がっていた形の良い眉毛は最大限下がり、大きな瞳に涙を浮かべて凛が抱きついてきた。
「...もぅ!優羽もばか!あんな男と付き合うなんて!でも好きっ!!」
抱きついてきた華奢な体を抱き返す。女の子らしい凛。可愛い凛。いつもあたたかく、甘い匂いがする。
「...うん。俺も好き」
「俺のだからね!!」
山根が吠えた。
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