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第4話 尾関圭人という人は。
ずっと、見ないふりをしてきた。
それが最善だと足りない頭で考えた。
...男同志、だし。
いや、先に告白してきたのは向こうですけど。...でも、やっぱり男同志だし。
浮気される方にも問題がある。
何かで読んだ。なるほど、と思った。
尾関圭人は、良くも悪くも目立った。
180近い身長に、アイドルみたいな甘い顔。人懐っこくて、スポーツも程々に出来きて。頭は普通だったけど、そこも良かった。
ただ、女の子絡みは良くない噂ばっかりだった。それでも女の子が寄ってくるのは、彼が相当魅力的だったからで。
...なんで、男の俺とまで付き合おうと思ったのかは謎だけど。
放課後の誰もいない教室の、持ち主も帰ってしまった机を指先でそっと触れる。
ベランダ側の後ろから2番目の圭人の席。
教科書やらプリントやらでごちゃごちゃした机の中までうるさいのが彼らしくて笑えた。
椅子を引いて、そこに腰掛ける。
静かな教室。かすかに聞こえる部活動の声、音、気配。
俺は目を閉じて、圭人の机に突っ伏して瞳を閉じた。
無機質な、ヒンヤリした感触。
初めて圭人が浮気をしたのは、付き合って1ヶ月が過ぎた頃だった。相手は他校の子で、学校帰りに山根と凛と遊びに出た繁華街で、手を繋いで歩く姿をたまたま見てしまった。
とても可愛い子だった。
凛がキレて、その場で圭人に殴りかかった。相手の女の子も突然現れた凛に驚いていたが、凛を彼女だと勘違いして逃げていった。その去りゆく後ろ姿を見て、呆然とする俺に顔を青くさせて圭人は言った。
『浮気してごめん。もぅ絶対にしない。俺には優羽しかいない。...ほんと、ごめん』
その言葉に涙が止まらなかった。
好きと言う感情は溢れていた。
だから、許した。
「...もぅ、しない、か」
顔を上げ、外を見ると圭人と手を繋いで帰る女子の姿が視界に入る。
その隣にいるのは、俺じゃない。
俺は何を信じればいいの?圭人。
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