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第12話 はじめましてです。

松木君の後ろから顔を出した女の子は、俺と圭人に気づいたようで、あ!と声を上げると顔を真っ赤にした。そして、また松木君の背中に隠れるようにして大きな瞳だけを覗かせた。まるで小さい子供のように。 「こ、こんにちは」 遠目でも可愛いのは分かっていたけど、近くで見るとその可愛さに圧倒される。凛も可愛いらしいけど、タイプが違うようだ。 大きな瞳、少し鼻は低いけど、そこが顔のバランスをとっていて違和感はない。ぽってりとした唇、うっすらとピンク色の頬。少し茶色の髪は今日も綺麗に揺れている。 「...こんにちは」 一瞬にして胸がざわついた。 正体不明な感情に戸惑ってしまう。 自分の声が、少し震えているような気がした。 「君、1年の武藤萌乃ちゃんだよね?噂通り可愛いねー」 調子のいい圭人の声が耳に入ってくる。 本来の社交的な圭人だ。 「そ、そんな事ないですよぉっ!」 恥ずかしそうに、ますます松木君の後ろに隠れる彼女。 「松木君?と付き合ってんの?」 「ちー」 「やだぁ!恥ずかしい~」 きゃあ、と高い声を上げて、彼女は松木君の背中に抱きついた。 「え?ちょ、萌乃!」 「あ、やっぱりそうなんだ!お似合いだな、な?優羽」 圭人の腕が肩に回される。 それをさり気なく解いて、圭人と距離をとった。なんだか、圭人に触れられるのが嫌だった。 「...可愛い、彼女だね」 なんとなく、松木君の顔が見れなくて俯いたら松木君と彼女の青いスリッパが目に入る。 「違っ、」 「...音楽室、最近行けなくてごめんね」 「先輩」 「...音楽室?」 俺の言葉に反応したのは彼女だった。何か考えているようだけど、俯いている俺はそれに気づかない。 「邪魔しちゃ悪いし、行こっか。じゃあね、松木君と萌乃ちゃん」 圭人に促されて、その場を離れる。 「太一郎、あたし達も行こうよ」 後ろにそんな声を聞きながら、当初の予定であった自動販売機に着いた。 隣では圭人がコーヒーを買っていた。 「ほれ」 ボーッと自動販売機を眺めている俺の手に、ミルクティーが渡される。 「...え?」 「いつまで悩んでるんだよ。相変わらず優柔不断だな」 それでも飲んどけ、と渡されたミルクティーは俺が好きな飲み物だ。 「...ありがとう」 「いーぇー。...さっきの2人、お似合いだったな」 「え?」 「いつの間に1年と仲良くなったんだよ?」 「...圭人、感じ悪かった」 「そう?...まー、そうかもな」 「...」 「優羽。俺、別れないよ」

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