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第13話 矢作優羽は俺のです。

初めて見たのは、入学式の日だった。 華奢な体、白い肌に黒い髪。大きな瞳は少し釣り上がってたけど、笑うと柔らかく垂れて。目尻に並ぶようにホクロが2つあって。クールな見た目とは違う優しい性格に今まで沢山の女の子と遊んだはずの俺は簡単にノックアウトされた。遊んだどの女の子よりも可愛かった。 その場のノリや勢いで何人もの女の子と付き合ったけど、優羽に告白する時は手の震えが止まらなかった。心臓も壊れるんじゃないかと思うくらいバクバクした。ダセーなって思ったけど、それでも優羽が欲しかった。 優羽が頷いてくれた時は、本当に嬉しくて嬉しくて。散々女の子と遊んでいい噂のない俺だけど、優羽は、こいつだけは絶対に幸せにしようと思った。 思った...けど。 「...んっ...あぁっ!あん!あん!」 今、俺の下で鳴いているのは優羽じゃない。似ても似つかないどうでもいい女だ。 ...ヤルためだけの、どうでもいい女。 なるべく顔も見たくなくて、後ろから犯してる女の背中を見ながらこれが優羽なら、と考える。 「んぁぁっ!や...っ、おっき...くなっ...たぁ。あ、すご...」 うるさい。 腰の動きを早め、ユルユルでイキにくい女の穴を穿つ。穿つ。穿つ。 「...っく!」 今だけの気持ち良さと、沢山の罪悪感とがごちゃ混ぜになって俺は果てる。 ...優羽。 ごめんな。ごめんな、優羽。 何回も何回も裏切っても俺のそばにいてくれたのに。 あの日、たまたま通った裏庭から見えた楽しそうな優羽と松木とかいう1年の姿。 ずいぶんと長い間見ていない優羽の笑顔が、俺のだった笑顔が違うやつに向けられているのを見て頭を強く殴られたようだった。 ーー優羽を渡したくない。 俺のワガママなのは分かっている。 今更だって。でも、やっぱり優羽が好きなんだ。離したくはない。

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