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第15話 おすそ分けです。

「矢作先輩!」 あれから、松木君からは今まで以上にLINEがくるようになった。 あれから、松木君は学校で会うと今までは笑って手を振ったり会釈するだけだったのに、近づいてこようとする。 その度に圭人や…あの娘が話しかけたりしてきてタイミングが合わない。 「松木君」 なんとなく、周りを見るけど圭人もあの娘もいない。 昼休み。 また俺はうろちょろとしていた。 「先輩。お久しぶりです!」 松木君も同じように周りをキョロキョロと見渡して誰もいないのを確認すると笑顔で近づいてきた。 「うん。...なかなかタイミング合わないもんだね」 「そうですね。でも、俺、先輩と話したかったんで嬉しいです。あ、どこ行くんですか?」 「う、うん、あ、自販機。飲み物欲しくなっちゃって」 会えて嬉しい。 松木君の言葉が頭でぐるぐるしている。 深い意味は無い。きっと。松木君はワンコみたいな子だから、知っている人に対して壁がないんだ。 「俺も一緒に行っていいですか?」 「うん。」 久しぶりに2人きりだ。 なぜか心臓が高鳴って、少し苦しくなってきた。 「先輩、何飲みます?」 いつの間にか自販機コーナーに着いた。数人の女子が居て、松木君を見るときゃっきゃ嬉しそうにした。 ほんとに、モテるなぁ。 それでも、松木君はそれを気にする風でもなく俺に笑顔をくれる。モテる男は違うなぁ。 ガチャ。ガコッ。 ボーッと松木君に見とれていると、はい、とミルクティーを差し出される。 「...え?」 「あれ?先輩、よく飲んでるからミルクティー好きかと...違いました?」 困ったように眉毛を下げて笑う松木君に心臓が大きな音を立てる。 「...飲み物で1番好きかも」 「良かった!」 顔中くしゃっとして笑う松木君。 「...あ、お金」 慌てて財布から小銭をだそうとしたら止められた。 「いやいや!俺いい事あったんで、おすそ分けです!!」 「でも...」 「いいんですよ!」 ニコニコの松木君にこれ以上言い返すことができない。 俺、年上なのに。 「ありがとう」 今日はありがたく受け取ろう。そう思って笑顔でお礼を言う。 「...先輩。やっと、笑顔が見れました」

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