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天然タラシです。
「あ!わ、す、すみません!」
松木君は今、気づいたように俺の涙を拭っていた手を慌てて離す。
温もりが消えるのが寂しく感じるなんて、俺は変だ。
「ふふ。松木君って、アレだね。天然タラシだね」
ドキドキする自分の胸を誤魔化すように、松木君を茶化す。この胸の音が、彼に聞こえてませんように。
「えっ!?タラシ?」
松木君はびっくり声を上げて慌てふためいた。
「女子とかにしちゃ、イチコロだね。ってか、松木君なら何もしなくてもイチコロか!」
上手く笑えてるかな。
恥ずかしくなって俯いた俺の視界には、松木君のスリッパがうつる。
「俺、モテませんよ?それよか、先輩の方がモテるでしょ?」
「え?俺?や、俺がモテるとか ないない」
顔を上げ、両手をブンブン振って否定する。
「そうですか?先輩、可愛らしいのに」
そう言って笑う松木君。
俺は松木君のセリフに頭がついていかず、脳が言葉を理解するとともに一気に顔に熱が集まるのを感じた。
俺が、か、か、可愛い...っ!?
「な、な、何言っちゃって...」
「あ、先輩照れてる。そういうところが可愛いんですよ」
ふわりと笑って、松木君は俺の頭を撫でた。
胸のドキドキが止まらない。
締め付けられるように痛いのに、なんだか心地良くて。俺はおかしくなったのかもしれない。
「...た、タラシだ!!」
「なんで?!」
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