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回るんです。

暫く、他愛もない話をしていた。 タラシの松木君は笑顔で、そこにもまたタラシの要素満載で。これは、本当にみんなメロメロになるなぁと改めて実感した。 そして、久しぶりに話をしていて、なんだかすごく楽しい。自然と頬が緩んでくる。 「松木!」 不意に後ろから声をかけられ、振り向くと英語担当の男性教師が立っていた。 呼ばれるまま振り返った松木君は「あっ!」と声を出す。 「お前、今日 日直だろ?プリント取りに来いって言っただろーが」 「忘れてた!ごめん、先生」 ごめんね先輩、と頭を下げて松木君は教師の後についていく。並ぶと教師よりも頭一つ分は大きい。そんな2人の後ろ姿を見送り教室に戻ろうかとした時、見慣れた後ろ姿が目に入った。 圭人だ。 思わず、隠れてしまった。 よく一緒にいる髪の長い、制服からでも分かるスタイルの良い綺麗な女子と居る。 見慣れたその姿に、最近では無くなったと思っていたけど...圭人はやはり変わらないんだと漠然と思った。 ため息吐いて、その場を離れようとした時。 「...だからっ!つきまとうなって言ってんだろっ!」 「な、なんで?あんなLimeだけじゃ分かんない!もぅ会わないってどういう事?」 「そんままの意味」 いつもの人懐っこい笑みは消え、圭人の顔は無表情だ。俺でも、こんな表情の圭人は見た事ない。背筋が冷たくなった。 「圭人っ!!」 「うるせーな。」 「...っ!!」 女子の長いまつ毛に縁どられた大きな瞳からポロポロと涙がこぼれる。 「あ、あたし達...付き合ってるんじゃ、ない、の?」 嗚咽混じりの彼女の声。圭人は立ち止まり、泣きじゃくる彼女を見つめる。 泣き声だけが聞こえる静かな廊下で、圭人の声が小さく響く。 「...俺、好きな奴がいる。今更だけど、そいつを大切にしたいんだ。...ごめん」 わぁっと、彼女が泣き崩れる。 圭人は彼女に向かって頭を下げると再び歩き出した。 残されて泣く彼女。 少し前の自分を見ているようで胸が締め付けられるように痛い。 泣く彼女を見ながら、その場から動く事も出来ずにただ立ち尽くして、圭人のセリフが頭の中をグルグル回るのを感じた。 グルグルグルグル回る。 大切にしたいって... ...好きな奴って、なんだよ、それ... 胸が痛くて苦しい。 鼻の奥がツンとして。 泣きそうになるのを必死で堪えた。

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